離婚後の共同親権を認める民法の改正案が16日、衆議院を通過し、今の国会で成立する見通しとなった。
離婚協議中だという男性2人を取材すると、期待や不安など、さまざまな声が聞こえてきた。
17日、「イット!」が取材した男性Aさん。
スマートフォンには息子との写真が保存されている。
妻と離婚調停中のAさん「もう全部かわいいね。純粋な素直な笑顔。会うたびに『パパ、パパ』って『パパおうち行きたい』とか、というのを言ってくれてて」
しかし現在、離婚調停中の妻側からの申し立てで、この半年近く、一度も会うことができないのだという。
妻と離婚調停中のAさん「普通にこう、一緒にお風呂入ったりとか、テレビをゴロゴロしながら見たりとか、一緒に寝たりとか、その本当の寝食をともにすることというのが、普通の親子関係だと思うけど、今、自分は離婚調停中なので、親権がある状態で、言ったら共同親権中なわけですけど、子どもと会う権利もないし、連絡を取る権利も、どこに住んでいるかとか、今何をしているかとか、まったく知りようがない」
そんなAさんの今後にも関わるのが、今の国会で審議され、16日に衆議院を通過した民法の改正案、いわゆる「共同親権法案」。
離婚後の親権者をどうするかについて、日本では現在、父親か母親のどちらかに限った単独親権のみが認められている。
改正案では、これをあらため、協議のうえで父親と母親のどちらにも親権を認める共同親権を選択できるようになる。
この法案が成立・施行されると、すでに離婚をしている両親も共同親権への変更を申し立てることが可能に。
一方で、夫婦間のDVや子どもの虐待のおそれが判明した場合などは、共同親権は認められず、単独親権になるとされている。
現在、妻側の申し立てによって子どもに会うことができないAさん。
妻と離婚調停中のAさん「(共同親権は)子どものためには絶対必要な制度だとは思う。やっぱり親の勝手な離婚によって会えなくなってしまうということは、起こってはいけないことだと思う。子どもと、いかに会う時間をつくっていけるかっていうところが、私としては一番重要視する部分」
国の調査によると、離婚後の親権者が母親側となる場合が85%を超えるのに対し、父親となる割合は10%余り。
現在、子どもに会うことができないAさんにとって、法案の成立は大きな1歩。
その一方、中身の不安は尽きないとも語る。
その1つが、誰が、どんな条件で、共同親権か単独親権か判断するのかということ。
妻と離婚調停中のAさん「家庭裁判所を使っている身からすると、僕らの主張が何も通らない。同居親のことばかりが優先されてしまうので、同居親が少しでも『DVのおそれがある』とか言うもんだったら、おそらくそれが通ってしまうだろうと」
一方、娘と1年以上会えておらず、離婚協議も不調に終わっているというBさんは、共同親権法案の実効性に、より懐疑的だ。
妻と別居中のBさん「例えば、海外では結構、共同親権はポピュラーになってますが、国によっては365日の半分半分で監督保護をするとか、そういった話もありますけれども、今回の法案の中では、そこがどうなのか、やや心配なところではあります」
一方で、シングルマザーを支援するNPO法人の意見は...。
しんぐるまざあず・ふぉーらむ 赤石千衣子理事長「すでに離婚が成立した方も、親権変更の手続きができるので、しつこい方は親権変更の手続きをしてくる可能性はある。ただただ恐ろしいということで、泣きながら訴えてくる(シングルマザーの)方もいる。合意形成ができないにもかかわらず、合意を取り決めを双方がしなければならない。親の葛藤の中に置かれ続けて、親の顔色をうかがい続けるような子どもの精神的な悪影響は計り知れない」
さまざまないろんな声が上がる中、16日に衆議院を通過。
今後は参議院に論戦が移る共同親権法案。
与党に加え、立憲・維新などの野党も賛成に回ったが、自民党の野田聖子元総務相は、党の方針に従わず、法案に反対した。
野田聖子元総務相「本来こども最優先の民法改正であるが、こども基本法の重要施策である“こどもの声を聴く”がなかったので懸念していた」
今回の共同親権法案が成立することで何が実際に変わりそうなのか、専門家は次のように指摘する。
東京弁護士会・福田笑美弁護士「線引きをどうするのか、そもそも共同親権なのか、単独親権になるケースなのか、新たな論点が今回の改正で増えてくる。むしろトラブルや紛争の種を増やすことになる、誰のための法改正になってしまうのかという懸念がある」
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