<東京 むかし、いま、みらい 都知事選2024>  東京都の年間予算は一般会計と特別会計を合わせて16兆5500億円。スウェーデンの国家予算に匹敵する規模だ。その巨大な財政を背景に、歴代の都知事たちは独自の政策を打ち出してきた。

◆老人医療費の無料化、臨界副都心の開発…

新銀行東京=2011年、新宿区で(参考資料)

 1969年、老人医療費を無料化したのは美濃部亮吉知事だった。1979年に就任した鈴木俊一知事は臨海副都心の開発を本格化。石原慎太郎知事は2003年、中小企業救済を目的に新銀行東京を設立した。それぞれの政策に賛否はあったものの、いずれも都の財政力なしでは実現が難しいものばかりだった。  現職の小池百合子知事は年間約600億円の予算を投じて、高校授業料の実質無償化を実施。都だからこそできる政策に、隣接する神奈川、埼玉、千葉県の知事からは「財政力の違いによって地域間格差が拡大している」との不満も漏れる。  ただ都の財政が常に潤沢だったわけではない。都の税収は法人からの割合が高く、景気の影響を受けやすい。このため、1990年代前半のバブル経済崩壊では財政赤字が拡大。民間企業の倒産に当たる「財政再建団体」に転落する瀬戸際に追い込まれた。2000年代以降も、リーマン・ショックの際に約1兆円、コロナ禍では約4200億円の税収減に見舞われた。

◆2040年には1300億円の収入不足か

 この先も楽観視はできない。都が2019年に公表した財政の長期推計では、就業者数の減少などで今後の税収の伸び率は低下。一方、高齢化に伴う民生費、物価上昇に伴う土木費の増加で2040年には約1300億円の収入不足に落ち込むおそれがある。  東京大の金井利之教授(自治体行政学)は「少子高齢化が避けられない中、都民の生活に真摯(しんし)に向き合おうとすると、都財政は厳しい。見栄えがいいだけの政策を打つ余裕はなく、リーダーの手腕が問われる。将来を見据えてどう予算を使うか、私たちの未来がかかっている」と話す。(岡本太) 

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