徳島県議会(定数38)は6月定例会最終日の3日、最大会派の「県議会自民党」(14人)を中心とした県議28人が選択的夫婦別姓制度の議論活性化を国に求める意見書案を提出し、賛成多数で可決された。同制度の法制化や議論の活性化を国に求める意見書は各地の議会が可決しているが、四国の県議会では2021年の香川県に続いて2番目。
意見書は、6月に経団連が公表した夫婦別姓制度導入を求める提言に触れた。また、婚姻時の夫婦同姓を定めた民法を「合憲」としつつ、国会での議論などを促した15年と21年の最高裁判決を引用。「家族のあり方も多様化する今の時代において、社会の考え方や価値観も確実に変化してきている」と指摘したうえで、「社会に開かれた形で選択的夫婦別姓制度に関する議論の活性化を行うよう強く求める」とした。
本会議では、賛否双方の立場から討論された。反対する県議は「議論の活性化には賛同するが、選択的夫婦別姓制度への意図的な誘導と言わざるを得ないような意見書だ」などと主張したが、議長を除く37人で起立採決し、可決された。
徳島県議会は今後、岸田文雄首相のほか、衆参両院議長、県選出国会議員らに意見書を提出する。
2010年に導入反対の県議、今回は提案者側に
選択的夫婦別姓制度を巡っては、徳島県議会は過去2回、導入反対を意図した意見書案を審議している。民法750条は婚姻時の夫婦同姓を定めており、法務省の法制審議会(法相の諮問機関)は1996年、選択的夫婦別姓制度の導入を盛り込んだ民法改正を答申した。徳島県議会は同年3月に「民法一部改正に慎重を期することを求める意見書」を、2010年12月には「選択的夫婦別姓制度の導入に反対する意見書」を可決した。
制度導入に反対する10年の意見書可決から13年あまり。選択的夫婦別姓制度を巡る意見書としては3回目となる今回は一転、議論活性化を求め、導入を促すことにも道を開く内容となった。
採決に臨んだ県議からは意識の変化がうかがえる。10年に制度導入に反対する意見書に賛成した議員のうち、複数が今回の意見書の提案者となった。その一人が、本会議で提案説明に立った岡田理絵前議長だ。岡田氏は毎日新聞の取材に対し、「結婚時に改姓すると、それまでのキャリアが途切れてしまい、不利益をこうむる。この13年あまりでそういう人を数多く見てきた」と振り返り、「この不利益は法改正で解決できるものだ」と指摘。本会議での賛否の討論を踏まえ、「立場や考えの違う人たちが議論をできる場を作ってほしいというのが意見書の趣旨だ」と語った。
経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は6月10日、選択的夫婦別姓制度導入を求める提言を公表した。日本では職場で旧姓を通称として使用する例も少なくない。婚姻時の夫婦同姓を定めているのは世界で日本だけで、海外で活躍する女性社員が増える中、通称使用が理解されずトラブルも起きていることを挙げ、「企業にとってビジネス上のリスク」と指摘した。経団連は24年1月と3月にも選択的夫婦別姓制度の導入を政府に要望している。6月には、経団連とともに「経済三団体」を構成する経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)も同調する発言をしている。【植松晃一】
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