【東京】昨年12月に米空軍兵の男が沖縄県内で少女を誘拐、性的暴行した事件で、男の起訴前に、関係省庁と首相官邸が情報を共有していたことが10日、外務省などへの取材で分かった。起訴は今年3月27日付。岸田文雄首相は4月に国賓待遇で訪米し、バイデン大統領と会談したが、日米の発表や報道などでは首相が事件に抗議した記録は確認できない。抗議や再発防止の要請をしたかどうかについて、外務省は本紙の取材に「日米首脳間のやりとりの詳細は回答を控える」としている。(東京報道部・新垣卓也、山城響)

 外務省によると、今年5月に発生した米海兵隊員による不同意性交等致傷事件でも、6月17日の起訴より前に官邸と情報を共有していたという。岸田首相は同23日に沖縄を訪れ、全戦没者追悼式に参列した際には二つの事件を把握していたことになるが、言及はなかった。

 林芳正官房長官は10日の記者会見で、相次ぐ暴行事件で「現地米軍から沖縄防衛局への通報はなかった」と明かした。政府が正式に認めるのは初めて。1997年に日米合意した通報手続きでは、米軍司令官は事件を把握した場合、防衛局に連絡することになっているが、守られていない。

 防衛省は本紙取材に事実関係を認めた上で、昨年12月と今年5月の二つの事件について、いずれも報道で公になった同時期の6月下旬に把握したという。

 参院外交防衛委員会は10日の理事懇談会で事件の経緯を聴取。政府は米軍から沖縄防衛局への通報はなかったとした上で、米側に抗議していないと説明した。終了後、立憲民主党の小西洋之氏が記者団に答えた。

 衆院沖縄北方特別委員会が同日開いた理事懇談会では、外務省は防衛省や県に事件の情報を伝えなかった問題について、「事務方の判断だった」と説明したという。

 野党はさらなる確認が必要として7月中にも閉会中審査を開くよう要求した。与野党で対応を協議する。

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