沖縄県内で相次いで判明したアメリカ兵による性暴力事件。昨年2月から今年5月にかけて、計5件(うち3件が不起訴)の事件について情報が県に伝えられていなかったことが明らかになった。本来であれば捜査当局(警察・検察)から外務省、防衛省、そして沖縄県と情報伝達されるはずが、外務省が防衛省に伝えず、その後、地元メディアの取材をきっかけに発覚した。
【映像】在日米軍関係者 刑法犯検挙件数
上川陽子外務大臣は、事件が性犯罪であること、被害者が未成年であることを理由に「プライバシーを保護するため」と説明したものの、玉城デニー沖縄県知事は抗議文を提出。上川外務大臣も県側への情報共有の在り方について、近く改善策を発表する考えを示した。さらに、那覇市など複数の市町村では「米軍人・軍属による凶悪事件は後を絶たない」とし、被害者への謝罪や日米地位協定の抜本的な見直しを求めた抗議決議を議会で可決。
今回の事件では犯人の身柄が米軍側から日本側へ引き渡されるといった対応がなされたが、これまでも在日米兵によるトラブルが起きるたびに問題視されてきたのが「日米地位協定」だ。『ABEMA Prime』では、沖縄の米軍兵士が犯罪を起こす実態、さらには「これでは日本が属国」とも言われる日米地位協定について議論した。
■在日米軍の起こした犯罪、外務省で情報がストップ今回発覚した米軍兵士による性犯罪の情報共有の流れは、外務省で止められていた。琉球大学・准教授の山本章子氏は「米軍の事件・事故は、責任部署が防衛省と沖縄防衛局。ここに伝わらないと補償手続きの説明が行われない。被害者への治療費の前払い請求や融資の手続きもあるのに、それが半年間も説明されなかった。防衛省まで伝われば、いろいろな仕組みで十分な治療ができたはず。ツケが全て被害者に回っている」という。この情報遮断について山本氏は、6月16日に行われた沖縄県議会議員選挙が関係していたという。「県に事件が知られると、選挙に利用されて(政府が)現県政が勝つと都合が悪いと忖度が働いたのではないか」。玉城県知事は米軍基地問題において政府と対立しているため、米兵による犯罪が明るみに出ることは政府にとって不都合だったのではないかと分析した。
■地元メディアの取材で発覚した事件 氷山の一角の可能性も発覚のきっかけとなったのは地元メディアの取材によるものだった。地元テレビ局が那覇地裁で見慣れない事件があったとし、関係者に取材。執念深く取材を続け事件にたどり着き、玉城知事へのぶら下がり取材時に質問をしたところ、玉城知事は「知らない」と発言。ここから他のメディアでも報じられ現在に至る。現役東大生で、株式会社カルペ・ディエム代表の西岡壱誠氏も「去年とかもっと前とか(他にも)もしかしたらあるかもしれない。来年、再来年も同じことが起きるのでは。どうやってブロックできるのか」と懸念を示した。
■研究者「米兵は身近。沖縄は思われているほど反米でも反基地でもない」現在、沖縄県民と米兵の関係とはどういうものなのか。政治学者の岩田温氏は、自身の体験を踏まえ「自分のゼミ生に沖縄の子がいたが、被害に遭ったことを言えないのが一番大きいという。言うと『被害に遭った人の方が悪い』と。言ったら家族の恥になるとか。だから表に出ているよりもずっと大きな問題がある」と述べた。これに山本氏は「沖縄の人は言われているほど反米でも、反基地でもない。親が米軍関係者や米兵という子も普通にいる。ただ被害に遭ったと言っても、米兵の子は『うちの親は犯罪者じゃないし』と反発するかもしれない。白でも黒でもないけれど、たくさんしがらみのある人間関係にひびが入って言いづらいのは実情としてある」とも説明した。
■なぜ日米地位協定は見直されない?「政治家はアンタッチャブルにしたがる」過去に在日米兵が起こした事件でも度々問題視されてきたのが日米地位協定だ。同協定では、公務中の米軍関係者が刑事犯罪を起こした場合、米国の軍法裁判で裁かれると規定されている。日本の捜査機関や司法が扱えるのは、米軍が身柄引き渡しを認めた場合に限られている。2002年、米海兵隊員による婦女暴行未遂事件が発生したが、身柄引き渡しを求めるも、アメリカ側が拒否。当時の川口順子外務大臣が「米側が引き渡しできないとし返事したのは残念」ともコメントした。約64年も改定されていないが、山本氏は政治家たちとの会話を踏まえ「一度でも外交交渉を経験した政治家は、日米地位協定はアンタッチャブルにしたがる。アメリカとタフな交渉をしないといけない。短期間で政治実績をあげたい人からすれば関わりたくないテーマ」と語った。与野党、どちらの勉強会にも招かれる山本氏だけに、これは日本の政治家共通だとも言えるポイントだ。
これには岩田氏が猛反発。「アメリカと仲良くやっている首相だけが長期政権。仲が悪くなると短期になる」とした上で、「はっきり言って日本は属国だ。自分たちのことを主張できない状態が続いている。これはどう考えてみても対等な同盟国じゃない。私は日米同盟支持者ではあるが、アメリカに言われたらなんでも、というのはおかしい」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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