現在、全国平均が「1004円」となっている最低賃金を引き上げる議論が進んでいる。最低賃金が関東で最も低い水準の群馬県内では、コストコが既に時給1500円を実現しているが、県内の他店は低い水準にあるという。現地店舗を取材すると切実な現状が見えてきたーー。
最低賃金が"46円”増える可能性も
現在の最低賃金の全国平均は、「1004円」だが、これを引き上げようという議論が本格化し始めた。
この記事の画像(11枚)10日、厚生労働省が行った審議会の様子を見ると、皆真剣な表情で資料に目を通していた。
「最低賃金」は、毎年見直されているが、10年前の2014年は780円だった。それが2023年度、過去最大の43円増となり、全国平均が初めて「1000円」を超え「1004円」となった。
そして今回、7月下旬の取りまとめに向けて、最低賃金の引き上げの調整が進む見通しだ。
時給アップについて東京・渋谷で話を聞くと、20代アルバイト男性は「結構上がりますよね。遊びの場をランクアップしたい。普段できないことをしようかなと」、10代アルバイト男性は「時給が50円アップすると結構デカイ」と期待する表情を見せた。
この最低賃金の引き上げは、岸田首相の肝いり政策。2023年9月に岸田首相は「2030年代半ばまでに、全国加重平均が1500円となることを目指す」と話していた。
2030年代半ばというと、約10年後だが、今回、議論されている最低賃金はまだまだ遠い印象だ。
最低賃金「935円」のなか…時給2000円超
政府が目指す「1500円」を、既に実現しているお店が群馬県にあった。
赤文字の看板でおなじみの「コストコ」だ。群馬・前橋市のコストコは平日にも関わらず、駐車場は満車だった。
1万平方mほどの大きな売り場に、ビッグサイズの肉やパンが並ぶ大型店で、アメリカに本社がある外資系の企業。コストコの時給を見ると時給は1500円で、休日の勤務になると最高2000円を超えていた。
コストコは世界各国にあることから、アメリカの時給に合わせているというが、関東の最低賃金を見てみると、群馬県の最低賃金は、関東で一番低い水準の「935円」だ。
関東で一番低いと聞いた群馬県民に話を聞くと、「しょうがないところもあるのかな…」「友達は1300円とか東京でうらやましいなと思う」といった声や、「(時給)上がってください。切実に」と懇願する人もいた。
「水道・電気・ガスの値上げ。もう一つ食材の高騰」
同じ前橋市では、時給が1000円前後のお店も多く、政府が目指す時給「1500円」のお店と、関東最低の給与水準が同居している。
コストコからほど近い前橋市内のカフェ、T.G.CAFE・蟻川博店長は「当店の時給がずいぶん安く感じられてしまう。当店ではまねできない」「太刀打ちできない」と、素直な気持ちを教えてくれた。
お店の時給は、980円からスタートして、仕事を覚えると時給も上がっていくという。
いずれ訪れる、最低賃金の引き上げだが、お店にとっては、時給50円アップも苦しい実情があるという。
蟻川店長は「水道・電気・ガスの値上げ。もう一つ食材の高騰。メニューの価格を上げざるを得ない。やっぱり常連さんも多い店なので、足が遠のいてしまうのではと、非常に心配しております」と切実な状況を明かした。
SPキャスター・パックンは、「人件費高騰は企業側にとって苦しい状況だが、日本経済は7割〜8割が内需型のため、賃金が上昇し、購買力アップに繋げる事が企業を元気にする要素でもある」と指摘した。
(「イット!」 7月11日放送より)
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