被災した自治体へのふるさと納税を、被災しなかった自治体が代わりに受け付ける「代理寄付」。三重県大紀町は今回初めて、能登半島地震で被災した石川県能登町の代理寄付を受け付けた。現地に行かなくてもできる新たな支援として町は手応えを感じており、各地の自治体にも広がりそうだ。
地震発生直後の1月、大紀町商工観光課長の玉木謙治さんは、ふるさと納税サイトで代理寄付という支援方法を見つけた。すでに給水車の現地派遣など、七尾市などへの復興支援は動き出していた。ふるさと納税を担当する自分たちの業務の範囲でもできることがあるはずと考えた。
さっそく服部吉人町長に話をして了承を受け、町長同士が知り合いという縁で能登町を相手先に決めた。しかし、最初は代理寄付にどう取り組んでいいかわからず、先行している多気町からアドバイスをもらった。
ふるさと納税の制度は、寄付を受け取った自治体が「受領書」を発行し、寄付者に送ることが必要になる。確定申告をしなくても寄付者が税制上の優遇を受けられる「ワンストップ特例」も、申請を受けて自治体が処理をしなければならない。こうした事務作業を、別の自治体が肩代わりし、集まった寄付を被災自治体に送るのが代理寄付の仕組みだ。被災した自治体は事務作業の労力を省け、復興に専念できるメリットがある。
玉木さんは、熊本地震や広島県の豪雨災害の支援で現地に派遣された経験がある。「被災地の自治体は復興の作業に追われて、通常の事務処理が追いついていない状況を目の当たりにした。代理寄付は、被災自治体にはありがたい支援と考えた」と話す。
復興支援のふるさと納税は「返礼品なし」が一般的だが、能登町への寄付は、大紀町が扱っただけで594万9102円(1月19日~5月31日、ふるさと納税サイト4社の合計)が集まった。「思っていた以上に寄付が集まった。復興支援への関心の高さを再認識した」と玉木さんはいう。
「自治体間の協力が広がるきっかけに」
ふるさと納税サイト側も、代理寄付に力を入れている。大紀町の代理寄付数の67%を扱った「au PAY ふるさと納税」は、自治体が支払うサイト利用手数料を無料にし、寄付額すべてが被災した自治体に届くようにしている。さらに代理寄付の受付額を千円からと低く設定したり、ポイントを使えるようにしたりと、気軽に幅広く寄付できる工夫も凝らす。
サイトを運営する「au コマース&ライフ」(東京)のマーケティング本部事業企画推進部の瀧澤純さんは「熊本地震の時に石川県の自治体から支援を受けた熊本県の自治体が、能登半島地震では逆に代理寄付で支援するなど、自治体間の協力関係が広がっていくきっかけになっている」という。
玉木さんは「代理寄付は『地方の街を応援する』という本来の趣旨を実現する仕組みになっている。今後も、ぜひ取り組んでいきたい」と意欲的だ。(鈴木裕)
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