岸田首相は経団連夏季フォーラムで講演した(19日、長野県軽井沢町)

岸田文雄首相は19日、長野県軽井沢町での経団連夏季フォーラムに出席した。「金融政策の正常化が経済ステージの移行を後押しする」と強調した。デフレから成長型経済に移ることで「金融政策のさらなる中立化を促す」と話した。

「日銀とも経済の大局観を共有しつつ、緊密に連携していく」と語った。

日銀は30〜31日の金融政策決定会合で物価や経済情勢を点検し、追加利上げをするかどうか慎重に判断する。QUICKが16日に発表した月次調査(外為)によると、7月の追加利上げを見込む市場参加者は23%と少なく9月以降が7割超を占めた。

日銀は物価動向や賃金上昇の進み度合いを見極めたうえで、政策金利を段階的に引き上げる方針を示している。首相発言は日銀が金融正常化を進めるのに追い風となるとみられる。

首相は講演で、春季労使交渉で賃上げ率が5.1%だったと触れ「極めて力強いものになった」と経済界に謝意を伝えた。30年間続いたデフレマインドの転換には「1〜2年では足りず一定の期間が必要となる」として、価格転嫁の徹底や公的賃上げの総動員を唱えた。

首相は「日本には様々な壁がある」と指摘した。具体的には中小企業が直面する英語という言葉の壁、労働市場の流動化に立ちはだかる壁、男女や年齢、官民の人材を隔てる壁などを挙げた。デジタルやAI(人工知能)を活用し、人材や資源を「再結合」して成長を実現すると訴えた。

半導体や脱炭素をはじめ国内投資を大胆に推進してきたと紹介し「バイオ、宇宙、量子といった分野においてもさらに一層強化していく」と表明した。

バイデン米大統領が撤退する可能性が報じられている米大統領選をめぐり「11月に向けて米国の政治状況は予断を許さない」と話した。4月の米議会演説で米国がリーダーシップを執るのを日本が支えると訴えた「メッセージを実行していく」と明言した。

「大局観と決断が首相の最も大きな使命だと思って仕事をしている」と明かした。「ボトムアップとトップダウンを調和させたリーダーシップを心がけている」と説いた。

9月の自民党総裁選を念頭に置いた秋の政治日程について「先送りできない課題に一つ一つ結果を出すことに専念する。いまはそれ以外のことは考えていない。ひたすら政策実行に注力する。これが私の責任だと思う」と述べるにとどめた。

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