政府は29日、各省庁が2025年度予算を要求する際のルールとなる概算要求基準を閣議了解した。「要求・要望は賃金や調達価格の上昇を踏まえて行い、予算編成過程において適切に反映する」と初めて明記し、物価高を踏まえて対応する方針を示した。岸田文雄政権が重視する物価高対策や賃上げ促進策などは、手厚く予算要求できる特別枠「重要政策推進枠」の対象とするほか、金額を示さずに項目だけを挙げる「事項要求」も認める。
岸田政権が掲げる「新しい資本主義」の実現に充てる特別枠は、昨年と同規模の4・2兆円とした。持続的・構造的賃上げ▽官民連携による投資拡大▽少子化・子ども政策▽防衛力の強化――を対象として示した。各省庁が政策判断で予算を増減できる「裁量的経費」を1割削減すれば、特別枠で削減額の3倍を要求できる。
予算で最大の支出分野となる年金や医療などの社会保障費は、高齢化による自然増を4100億円と見込む。後期高齢者人口の増加が鈍化し、昨年の概算要求時の5200億円から減った。年末の予算編成過程で、伸びの圧縮を目指す。
概算要求基準は歳出上限を示す「シーリング(天井)」とも呼ばれる。ただ、14年度以降は上限を示しておらず、国債の利払い費や償還額を含めた一般会計の要求総額が100兆円を超える状況が続いている。
近年は、要求時点で政策の規模や中身が決まっていなくても幅広い解釈で要望可能な「事項要求」が増えている。25年度の概算要求では、人件費や物品の調達価格の上昇を背景にした要求増のほか、金利上昇に伴う国債の利払い費も増える見込みで、歳出拡大圧力は一層強まりそうだ。
各省庁は基準に従い、8月末までに財務省に概算要求を提出する。財務省は内容を精査し、年末までに政府予算案を作成する。【加藤美穂子】
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