岸田文雄首相は9日、爆心地の東西約7~12キロで長崎原爆に遭ったとして被爆者と認めるよう求めている「被爆体験者」の団体代表と長崎市で面会し、「政府として早急に課題を合理的に解決できるよう、厚生労働相に具体的な対応策の調整を指示する」と述べた。厚労省は今後、救済の拡大について長崎県や長崎市と調整する。
国が指定する被爆者の援護区域は長崎市の爆心地から東西約7キロ、南北約12キロの範囲。原爆投下時に東西約7~12キロにいた人は「雨や灰などの放射性降下物による内部被ばくで健康被害を受けた可能性がある」として被爆者健康手帳の交付を求めているが、国は被爆者と認めず、精神疾患と関連症状に限り医療費を助成している。
岸田首相は長崎市であった平和祈念式典後、被爆者4団体と被爆体験者3団体から要望を聞く会に出席。歴代首相として初めて被爆体験者と面会した。「第二次全国被爆体験者協議会」の岩永千代子会長(88)は「国が広島の黒い雨体験者を被爆者と認めながら、長崎の被爆体験者を認めないのは差別だ」と訴えた。
これに対し、岸田首相は「被爆体験者の支援に努めているが、被爆から80年が経過しようとし、高齢化されている。広島との公平性についても、ご指摘があった」として、同席した武見敬三厚労相に「具体的に取り組んでもらいたい」と対応を指示した。
国は爆心地から東西約7~12キロについて「第2種健康診断特例区域」とし、年1回の健康診断のみ無料で受けられる受診者証の所持者が全国に6323人(3月末)いる。うち被爆体験の影響による精神疾患が認められる4501人(同)には「被爆体験者精神医療受給者証」が交付され、精神疾患と関連症状の医療費助成が受けられる。【尾形有菜、日向米華】
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