長崎は9日、被爆から79年となる原爆の日を迎えました。原爆の犠牲者を悼み、平和を誓う祈念式典の会場には、過去最多となる100の国と地域の代表が集まりました。
ここに参加するはずだったエマニュエル駐日アメリカ大使の姿はありません。
ことの発端は、長崎市が、パレスチナ自治区・ガザへの攻撃を続けるイスラエルの招待を見送ると発表。不測の事態を避けるためという安全上の理由からです。
招待の見送りは、ウクライナに侵攻したロシアと同盟国のベラルーシに続き、3カ国目。これに反発した日本を除くG7各国とEUの駐日大使から「イスラエルが除外された場合、我々としては高官の出席を断念せざるを得なくなります」という書簡が届きました。
長崎市が方針を変えることはありませんでした。
結果として、日本を除くG7の6カ国の駐日大使が軒並み欠席。いわば、イスラエルとの“連帯”を示すためのボイコットです。
イスラエルのコーヘン駐日大使は、SNSにこう投稿していました。
イスラエル・コーヘン駐日大使
「イスラエル除外に反対することを選んだすべての国々に感謝の意を表したいと思います。歴史の正しい側に立っていただき、ありがとうございます」
広島で被爆の実相を目の当たりにし、『核なき世界』を誓ったはずのG7。原爆投下の当事者であるアメリカが、長崎の地で、その誓いを新たにする意味は小さくなかったはずです。
オバマ政権下でルース大使、ケネディ大使と参列が続き、大統領自身の初の被爆地訪問も実現。台風が直撃した去年を除いては、参列が続いてきました。その積み重ねが、イスラエルの招待をめぐって途絶えたのです。
長崎市・鈴木史朗市長
「核保有国と、核の傘の下にいる国の指導者の皆さん、被爆地を訪問し、被爆者の痛みと思いを一人の人間として、あなたの良心で受け止めてください。そして、どんなに険しくても、軍拡や威嚇を選ぶのではなく、対話と外交努力により平和的な解決への道を探ることを求めます」
祈念式典を欠席したアメリカのエマニュエル大使は、東京の増上寺での追悼会に出席しました。
アメリカ・エマニュエル駐日大使
「ロシアは侵略国でイスラエルはそうではありません。出席すれば、市長の政治的判断を尊重することになる。私の良心がそれを許しません」
同じく大使の参加を見送ったフランス。大使の代わりに参列した公使に話を聞きました。
フランス・ティリエ駐日公使
「(Q.大使の欠席に失望の声もあるが、どう釈明しますか)公使の私が出席していることに大きな意義があります。イスラエルが招待されず、式典に参加できないことを残念です。(Q政治的な理由だと思うか。長崎市長は“安全上の問題”としているが)安全上の問題ならパリオリンピックも同じです。それでイスラエルが招待されないなら、どこでも無理です」
一方、パレスチナの参事官は、イスラエルを招待しなかったことについて、こう述べました。
駐日パレスチナ常駐総代表部・ナサール一等参事官
「市長は平和の歴史の正しい側にいます」
市民の声です。
長崎県被爆者手帳友の会・朝長万左男会長
「(Q.欧米側が政治的な構図を当てはめて出席を拒んだ)長い歴史のなかで、平和式典で初めてそういう政治利用が起こったと思う。(Q.それは悲しむべき?)被爆者や亡くなった方の慰霊という視点からずれていると思う」
大学生2年生
「本来は原爆の被害にあった人たちとか、いまも苦しんでいる人たちの現実を目にすべき場所だと思うので、そういう場所になるべき」
母が被爆・山崎直美さん(56)
「きょうは長崎の式典ではあるが、全世界、すべての方々が集って、平和を祈る式典であるべきなので、そこにいろんな国と国の壁だったり、隔たりみたいなものがあるというのは、本来は残念なことだと思う」
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