小泉龍司法相(右から3人目)に提言書を渡す自民党の「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」のメンバー=19日午後、法務省(奥原慎平撮影)

性同一性障害特例法を巡り、自民党有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」のメンバーは19日、小泉龍司法相と面会し、性別変更する際の要件の厳格化を盛り込んだ提言を提出した。生殖機能の喪失を要件とした特例法の規定が憲法違反と判断されたが、規定の撤廃が広がれば、性同一性障害を抱える生来の男性と、「女性のなりすまし」との見極めが困難になりかねないとの指摘もある。小泉氏は「さまざまな論点が議論され、多くの国民に理解してもらい、一番いい形で進むことができればと思う」と述べた。

女性スペースを守る議員立法を先行

提言では、10年以上継続して性同一性障害の治療を受け、他の性別で社会生活を営んでいることの確認を新たな要件に加えている。女性の生殖機能を持った「法的男性」が出産した場合に備え、民法上の親子関係などを整理する必要にも言及している。

さらに、女性専用トイレ、浴室、更衣室、女子寮など、男女が「生来の性別」で分けられたスペースに関して、国や地方自治体、事業者など管理者に対して女性の安心・安全を守る努力義務を課す議員立法を作成する方針を盛り込み、各省庁に協力を求めた。

議連共同代表の片山さつき元地方創生担当相は小泉氏に対し、「理念法として『女性スペースの安心・安全を守る議員立法』を先行し、世の中の不安を取り除いていく」と述べた上で、特例法について「慎重に国民にとっていい形での改正をされるならお願いしたい」と訴えた。

腰を据えて考えるべき課題

特例法は、性別を変更するために複数の医師から性同一性障害の診断を受けた上で①18歳以上②未婚③未成年の子がいない④生殖不能⑤変更後の性別の性器に似た外観を備えている─の要件を定めている。最高裁は昨年10月、④の要件を違憲と判断し、⑤についての憲法適合性の審理を広島高裁に差し戻している。④と⑤を合わせて「手術要件」といわれる。

提言を提出後、議連の副代表を務める柴山昌彦元文部科学相は記者団に「(女性のなりすましなどによる)性犯罪に近いことが起きかねない不安が起きている。女性スペースの安全確保が極めて大きな検討課題で解決しなければならない」と強調した。「(手術要件が撤廃された場合)精神的な判断だけで性別変更が認められる可能性が出てきている。(法的)男性である母親、女性である父親も出てくる。腰を据えて慎重に考えるべき課題だ。ふわっとした多様性で片づけていいのか」と疑問視した。(奥原慎平)

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