会計検査院=東京都千代田区

政府は、事業が事実上終了している約10の基金を廃止する方向で調整に入ったと報じられた。

基金とは、「独立行政法人、公益法人等や地方公共団体が、国から交付された補助金等を原資として、特定の用途に充てるため、他の財産と区分して保有する金銭」で、①複数年度にわたる事務又は事業であって、各年度の所要額をあらかじめ見込み難く、弾力的な支出が必要であること、その他の特段の事情が認められること②あらかじめ当該複数年度にわたる財源を 確保しておくことがその安定的かつ効率的な実施に必要であると認められること―のいずれも満たすものである。

基金は国から基金に支出した後、基金から複数年度にわたる支出が可能となるため、中長期的な視点で柔軟な執行が可能となる。

基金の法的根拠はどうか。基金は補助金などを支出する年度の予算に計上されることよって新規に造成あるいは既存の基金への積み増しが行われる。当該予算の国会による議決を受けて事業実施主体への支出が行われることとなり、基金の造成または積み増しに当たっては、財政法令上の規定は必要とされていない。

要するに、基金では複数年度の支出が1度で行われるため、本来の単年度主義なら複数回のチェックが行われるところ、1回しかチェックが行われないのが、財政当局からの問題意識だろう。もっとも、予算でも、新規予算はチェックされるが、既存予算のチェックはあまりされず前年と同じとも指摘されているので、「五十歩百歩」ともいえる。

ただし、財務省も一度認めた予算でも、その後の執行をみて看過できないものがあったのだろう。

国が所管する基金は現在、180超ある。新型コロナウイルス対策で積立額が膨らみ、全体の残高は2022年度末時点で計約16兆6000億円となる。

廃止を調整している基金は、電気自動車充電設備を設置する「省エネルギー設備導入促進基金」、農林漁業者が発電事業を行う「地域還元型再生可能エネルギーモデル早期確立基金」、東京電力福島第1原発事故で企業立地が落ち込んだ地域を支援する「環境対応車普及促進基金」などだという。

しかし、これで十分だろうか。政府内の会計検査院も基金を見過ごしていないだろう。

さらにネット上では「公金チューチュー」という言葉がはやっている。「暇空茜」というハンドルネームの人が1人で東京都を相手として福祉関係の団体に対する補助金支出について監査請求などを行い、訴訟で勝ったりしている。他のネットユーザーは称賛し、資金提供もするという現象も起きている。

この例で示唆されることは、財務省のチェック機能には限界があるので、第三者のチェックも有効ということだ。

第三者の指摘に対して報奨金を出すというのも検討していいだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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