岸田首相(左)と、バイデン大統領は10日、米ホワイトハウスで会談した(共同)

日米首脳会談が成功裏に終わったと思ったら、直後にイランがイスラエルをミサイル攻撃した。米国と英国、フランスの軍隊が一部を迎撃、または迎撃の支援を行ったという。

岸田文雄首相は米国議会で「われわれは、あなた方とともにいる」と演説した以上、極東で同様なことが起きたら、日本もできることをしなければならない。その覚悟を日本国民は持っているだろうか。

さて訪米前、日本では「11月の大統領選のわずか7カ月前という微妙な時期になぜ行くのか」「ドナルド・トランプ前大統領の復活もささやかれる中でなぜ」という指摘が多かった。

ジョー・バイデン大統領はまだ「死に体」ではないものの、少なくとも「二股」をかけた方がいい時期に、わざわざ一方と仲良くする必要があるのかということだった。自民党内にもそういう声はあった。

実は、米側も同様の不安を感じていた。

2月に日本の政府関係者が訪米し、ホワイトハウスや国務省の高官と会った際、会う人会う人から「キシダは大丈夫か」「4月の首脳会談のすぐ後に政権が倒れることはないのか」と質問攻めだったという。

つまり、「フミオ」「ジョー」と呼び合ってにこやかに会談した2人だが、腹の中では「次に会うときは違う人かもな…」と思っていたのかもしれない。では、どちらの国の方が政治リスクは大きいのか。

首脳会談後に行われた世論調査では、共同通信とANN(朝日ニュースネットワーク)いずれも内閣支持率が4~5ポイント上昇した。国民は岸田首相の外交成果を評価している。

このまま支持率が上がり続け、岸田首相が6月に解散するか、あるいは9月の自民党総裁選の勝者が解散するのか。政党支持率を見る限り、与党が議席を減らすことはあっても、今の野党への政権交代の可能性は低いだろう。

「ポスト岸田」として名前の挙がっている5~6人のうち、首相が誰に代わったとしても、日本の安全保障、経済、エネルギーなど根幹の政策が大きく変わることはない。だから、バイデン政権は日本の政局をあまり心配する必要はない。

問題は米国だ。バイデン氏が再選した場合、高齢を考えると、途中でカマラ・ハリス副大統領に代わる可能性がある。どちらにしても大統領の指導力は落ち、米国の国力は落ちるが、対日姿勢に変化はないだろう。

トランプ氏が再登場した場合は結構大変だ。間違いなく、「日本の軍事負担の強化」を言ってくる。ただ、日本の強みは、岸田首相が安倍晋三政権から引き継いで国家安全保障戦略を策定し、防衛力強化、防衛費増額をすでに決定していることだ。

だが、トランプ氏はそれ以上のことを日本に要求するだろう。「キシダは『いつもあなた方とともにいる』と言ったじゃないか、もっと軍事貢献してくれ」と要求するだろう。

日本の政治家は、国民は、その要求に応える覚悟はあるのだろうか。(フジテレビ特別解説委員 平井文夫)

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