自民党の小林鷹之前経済安全保障担当相(49)は19日、9月の党総裁選への立候補を表明した。国会内で開いた記者会見では、政治改革や改憲に積極的に取り組む考えを示した。旧統一教会のイベントに出席した過去をめぐっては「過去に選挙支援の依頼をしたことも、金銭のやり取り含めて、一切関わりはない」などと説明した。記者との質疑応答の主な内容を紹介する。(佐藤裕介、近藤統義、長崎高大、宮尾幹成)

◆「20人を超える同僚議員、心強い気持ちでいっぱい」

―10人程度が意欲を示している今回の総裁選で、真っ先に立候補表明の記者会見を開いたねらいは。この会場には20人を超える議員が集まっているが、推薦人として確保できているのか。 「今回、派閥に関係なく一人一人の議員としての思いでこの場に足を運んでくれたと理解をしている。推薦人をどうするかというのは考えなければいけない話だと思っているが、こうして20名を超える多くの同僚議員が足を運んでくれて、心強い気持ちでいっぱいだ」 「タイミングについて。結果として、私が一番早かったということだ。実は8月16日に出馬会見を考えていた。だが、台風が到来しているということもあり、さまざまな議論はあったが、私の判断で、やはり国民の命と暮らしを守る、それが政治家の使命ですから、この日になった。私は今回、チャレンジャーの立場。知名度もない。総裁選の投票日がいつになるか分からないが、1日でも長く、自身の国に対する思い、ビジョン、政策を一人でも多くの党員や国民の皆さんに知っていただきたい、そういう思いでこのタイミングとなった」

自民党総裁選への立候補を表明した小林鷹之氏=国会内で(木戸佑撮影)

―小林さんは二階派に所属していたが、派閥の枠組みを超えて出馬するねらいは。派閥会長だった二階俊博元幹事長とは話したか。 「お金、あるいは人事で、こうした(派閥の)力を背景とし政治を動かすというやり方は、もはや今の時代にそぐわないのではないか。その意味で、今年の3月に党のガバナンスコードも改定し、政策集団は認めるけれども、旧来の派閥は認めないと。自分たちで決めたルールなので、当然そのルールは守る。それが原則なので、今回、『脱・派閥選挙』ということで打ち出した。二階代議士には個人的に報告はしている」

◆裏金事件「検察のような権限を持たない調査には限界」

―派閥の裏金事件の実態解明について。国会の政治倫理審査会では、自民党も含めた全会一致で当事者の出席を求めているが、出席していない方がほとんどだ。説明に後ろ向きな党内の現状について、どう考えているか。当事者の説明責任や実態解明は十分だと思うか。不十分だとすれば、今後どのように実態解明を進めていくべきか。 「一人一人の政治家が自ら説明責任を果たしていく。これが原則だ。私も実態が正直よく分からない。検察当局が調べる中で、今回不起訴という処分になっている。そうした中で、検察のような権力、権限を持たない自民党が調査をするというのも一定の限界がある。新たな事実が出てきた場合には当然、党としての調査を考えるということだと考えている」 ―政治の信頼回復について。政治資金問題で処分を受けた議員が要職から外されている現状を見直すべきだとの認識を示していたが、改めて見解を。

自民党総裁選への立候補を表明した小林鷹之氏=国会内で(木戸佑撮影)

「要職を外れた方をまた元に戻せということを、私は一切申し上げていない。真意を申し上げると、不正には厳正に対処しなければならない、これは大原則。一旦なされた処分は、だからこそ変えるべきではない。厳格に運用すべきだ。その上で、党で正式に処分をされていない議員にも役職を外されている方たちがいるので、国民の一定の理解を得られた時点で、適材適所の人事を行うということが大切ではないか、という趣旨で申し上げた」 ―政策活動費や旧文通費のさらなる透明化、第三者機関の設置などを掲げた。こうした内容は、改正政治資金規正法や与野党党首の合意の中でも盛り込まれているが、改革のあり方として不十分だと思っているのか。 「まず全体として、それぞれの議員が地元と話をしている中で、改革はまだ道半ばで、国民の十分な理解が得られているとは言い難い。今回の政治資金規正法改正、あるいはそれに先立って変えた党則、ガバナンスコード。自分たちで決めたことをまずは着実に順守する。法改正の際にいくつか検討事項が付いた。総裁になればただちに検討に着手し、可能な限り早期に結論を得ていく」 ―知名度の部分で感じている課題は。 「全く知名度がないというところからのスタート。単なる顔見せとか、そういう思いで臨んでいるわけではなく、仲間とともに勝ち抜く覚悟だ。全国各地を飛び回り、自分の思いを訴える。SNSやYouTubeのライブも挑戦してみようと思う」

◆マイナカード、住民票の旧姓併記「国民への周知を徹底する」

―選択的夫婦別姓について、党内での議論をこれからどのように進めていこうと考えるか。 「実際に不便を感じられている方々、また具体的な不利益を被られている方々というのはいると、そのことは認識している。その中で、どういうアプローチをしていくかということだが、すでに旧姓の併記がマイナンバーカードや住民票、こうしたところで認められているし、多くの国家資格で認められるような制度改正がすでに我が国においてもなされている。そうした制度改正が国民にまだまだ理解されていない、周知されていない。もっと周知を徹底する形で、より現実的に、スピーディーな形で、このニーズに応えていくべきだ」

記者会見に臨む小林鷹之前経済安全保障担当相=国会内で(木戸佑撮影)

―旧統一教会との関係で、2021年に関連団体のイベントで挨拶をしていて、それ自体は小林さんも認めているが、(旧統一教会問題を追及してきた)ジャーナリストの鈴木エイト氏は、小林氏が「統一教会の教えは公明党よりも上だ」というふうに発言したという指摘もしている。それは教義を分かっているということだと思うし、関係の深さを示していると思うが、今も関係は深いのではないか。 「今日も鈴木エイトさんが(記者会見場の)後ろにいらっしゃるが、2年前の私の大臣会見の時にも申し上げたが、そもそも今ご指摘いただいたような発言をした記憶は一切ない。経緯というのは、地元の方から誘われ、自転車レースみたいな感じだったが、地域のスポーツ行事という認識で参加をした。今振り返れば、主催者の確認をもっと本当に徹底してやっておけば良かった、ある意味軽率だったと反省している。 ただ、申し上げたいのは、過去に今おっしゃったような団体の方たちとの間で選挙支援の依頼をしたことも、金銭のやり取り含めて一切関わりはない。現在も当然、こうした団体の方たちとの関わり合いはないし、今後も持つつもりはない。そうならないように、しっかりと気をつけていきたいと思っている」 ―裏金問題への姿勢がちょっと弱いのではないか。(小林氏は)元二階派だが、(党は)二階さん自身も処分しなかった。このことについてどう思うか。また、(安倍派の元会長の)森喜朗元首相への聴取が国会の場で必要だと思うか。 「森元総理のことは全体の関係で存じ上げないのでコメントを控える。二階代議士の話だが、 次期衆議院選挙に出馬をしない、その決断をもって、それはそれで一つの政治家としての責任の取り方なのではないかというふうに受け止めている」 ―金融政策について。利上げの是非や時期について。為替の適正水準や政府と日銀の共同声明のあり方について、どのようなお考えか。 「原則にあるのは、経済は生き物だ。その時々に財政政策と金融政策を柔軟に組み合わせて対応するということが正しいやり方だ。まず政府と日銀のアコード(共同声明)については、私は十分にあり得るというふうに思う」 「金融政策は日銀の専管事項だが、先日、日銀の副総裁自身が、利上げで円安調整が起こって結果としてマーケットが大幅に動いたということについて、一定の責任というか、そういうものを認めた。それを率直に受け止めているし、経済は生き物なので、利上げの判断については、やはり日銀とマーケットの間で丁寧な対話、安定的な対話というものをしっかり心掛けていただきたいなというのが私の思いだ。為替水準については、基本的に為替相場というのは経済のファンダメンタルズを反映するもので、一般論としては急激な変動は好ましくないというふうに思う」

自民党総裁選への立候補を表明した小林鷹之氏=国会内で(木戸佑撮影)

―地元のことについて伺いたい。小林氏の有力な支援者の中に複数の統一教会の関係者、地区の幹部がいることを確認している。その認識があるかどうか。地元の有力な支援者に統一教会関係者が複数いる状態で、統一教会に対して厳しい対応を取れるのか。 「厳しい対応を取る岸田総理の方針を私も堅持するので、そこはそういうことで受け止めていただきたい。私自身の後援会、それぞれの人が私人で、一人一人のプライバシーにおそらく関わる話。一人一人の思想信条に、あなたは何を信じていますかとか、一人一人聞くことは、やっぱりそこは限界があることは認識いただきたい」

◆改憲は「優先順位をつけて他党とすり合わせる」

自民党総裁選の立候補を表明し、記者会見する小林鷹之前経済安保相=東京・永田町の衆院第1議員会館(木戸佑撮影)

―憲法改正について。(記者会見で配布された)紙でも、もはや先送りできない課題であり、最大限の熱量で取り組むと書かれているが、早期の国会発議に向けてはどのように具体的に取り組んでいくのか、衆院憲法審査会の幹事を務めていて、その難しさは十分にご承知かと思うが、改めて改憲への道筋、どのようにお考えなのか。 「ひとことで言えば、自民党としてのスタンス、戦略を決めるということだと思っている。つまり、(改憲の)発議に向けては当然、他党とのすり合わせも必要になってくる。 しかし、その前提として、自民党がどういう方針で憲法改正の発議に臨むのか。すなわち優先順位を含めて、しっかりと順位付けして、そこをしっかりと決めていかないと、他党との意味のある交渉というのはなかなかできないと思う」 「私が総裁になった暁には、6年前に(自民党の改憲)4項目というものが出ていて、ここには優先順位はないというふうにされているが、先ほど申し上げたこと(緊急事態条項の創設と自衛隊の明記)を優先事項として思っている。それは党の中でしっかりと検討して、優先順位、戦略をつけて、他党とすり合わせをするということだと思っている」 「加えてやはり、世論調査をやると、どうしてもその憲法改正に対する国民の皆さまの関心が低い。これは私たち政治家の責任だと思っているので、国民の皆さまの意識を少しでも喚起できるような、そういう動きを自民党としてさらに加速する必要があると思う」

◆森友問題で財務省職員自死「人間として感じるところはある」

-森友学園問題で、赤木さん(自死した近畿理財局職員の赤木俊夫さん)の奥さまが求めていた再調査について、小林さんは毎日新聞のアンケートに、必要ないと答えている。あなたも財務省理財局にいた。同じ仲間として、ことを放っておいて平気でいられるのか。再調査の問題について、どうお考えになっているか。 「亡くなった赤木さま、そしてご遺族の皆さまには心からお悔やみを申し上げます。その上で、この法治国家において、司法のプロセスでしっかりと判断をしていく問題だというふうに受け止めている。ただ私も政治家ですから、私も財務省で理財局という部署に所属をしていた時期もあったので、人間としていろいろ感じるところは当然ある。そういう気持ちをしっかりと持ちながらも、この社会において、司法のプロセスに則って、一定の解決策を出していくのが一つのあり方だと思っている」 

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