「『一定期間継続した社会生活』を手術要件の代替要件とすることは一つの落としどころではあると思う」
8月8日配信の記事「性同一性障害特例法の改正巡り『新たな要件』浮上 専門家から懸念も」に、弁護士の仲岡しゅんさんは、こうコメントした。
記事では、トランスジェンダーが戸籍上の性別を変える際の要件を定めた「性同一性障害特例法」の改正に向けた、自民・公明・立憲民主の各党の動きや方向性を報じた。最高裁が昨年10月、性別変更の5要件のうち生殖能力の喪失を求める「生殖不能要件」は違憲と判断したほか、今年7月には広島高裁が、性器の見た目の変化を求める「外観要件」は「手術が必須なら違憲の疑い」と判断。自民党の特命委員会の報告書は、性別適合手術を原則として求めてきた二つの手術要件を削除する方向性を記した一方、その場合は「新たな要件」が必要との考えも記したことを伝えた。
トランスジェンダー当事者でもある仲岡さんは自らの実感も踏まえ、性別移行は「何年単位の長い時間をかけて少しずつ自分のあり方や周囲との関係性を再構築していくものであって、ある日突然なし得るようなものではない」と指摘。自民党の特命委が提起した、自認する性別に基づく社会生活が一定期間継続していることを求める「新たな要件」の案に、一定の理解を示した。
一方で「自認する性別に基づく社会生活」や社会的移行に要する期間は「個人差が極めて激しい」上、要件を満たしているかを判断する医師の間でも当事者への理解にばらつきがあることが否めないとして、「より解像度を上げたガイドラインなどが必要」ではと訴えた。
さらに、こうした議論が政治的な力関係の中、ごく一部の人たちの間だけで展開されていることに懸念を示した上で、トランスジェンダーの当事者の意見のほか、実際に運用する医師や法曹らの疑問もくみ取りながら議論を進めるべきだとした。そして、次のようにコメントを結んだ。
「日本社会の実情や法制度に馴染(なじ)んだ法律でないと、かえって混乱した状況に立たされるのは、他でもない市井の当事者たちだ」
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