異例の10人を超える出馬が取り沙汰され、乱戦模様の自民党総裁選。これまであまり取り上げられていないが、いち早く出馬の意向を表明している青山繁晴参院議員(72)が「こちら特報部」の取材に応じた。「自民党は主権者の憎悪に近い怒りに気づいていない。腐った部分をたたき直すしかない」と、現状への危機感と怒りをぶちまけた。(宮畑譲)

◆「候補者の後ろに長老とか派閥の長が見えてしまう」

自民党総裁選について記者会見する青山繁晴参院議員(左)=23日、参院議員会館で(佐藤哲紀撮影)

 「顔を替えたら国民の憎悪が収まる、政権を失わない。そう考えているのなら、私とは全然、考えが違っている」。のっけから、今回の総裁選に漂う党の思惑を厳しく指弾する。  青山氏は共同通信記者やシンクタンク代表などを経て、2016年に参院比例代表で初当選し、現在2期目。政界入りは安倍晋三元首相から打診があったからとされる。自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」の代表を務め、ブログやネット動画でも活発に発信している。  今回、多くの議員の出馬が取り沙汰されているのは、裏金問題の原因となった派閥の解体が進み、その縛りから解放されたから、との見方がある。一方で、各議員の出馬には、相変わらず大物議員の意向が見え隠れする。

自民党総裁選について記者会見する青山繁晴参院議員(後方左)=23日、参院議員会館で(佐藤哲紀撮影)

 青山氏は「候補者の後ろに長老とかボスとか、派閥の長とかが見えてしまうこと自体が政権を失う大きな動機になる。国のためにもよくない」と訴える。

◆裏金問題と旧統一教会との関係がカギ

 今回総裁選の候補者には、裏金問題への対応と、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係の2点が厳しく問われる。  裏金問題について青山氏は「表に出せない金は政治資金ではないので納税しなくてはいけない。そこからやり直しだ。新しい総理は党内で暴風雨にさらされてもやらないといけない」と言い、政治資金規正法の再改正が必要だと主張する。  旧統一教会との関係では「堂々と説明するだけのこと。手を貸しているのなら総理になっちゃいけない。(関係を)答えられないのなら総裁選に出るべきじゃない。当たり前でしょ」ときっぱり。

◆「例外的な私が、解散権を持って公平に判断」

 歯切れのよい青山氏だが、過去に参院議員が自民党総裁、総理大臣に就いたことはない。法律上の決まりはないが、解散総選挙という審判を受けない参院議員が、「解散権」を行使することに問題があるとされる。  青山氏もそのことは承知の上で、「完全無派閥、献金・パーティーゼロ。党内で例外的な私が一度、解散権を持って公平に判断する必要があると思う。あえて参院から出るべきだと思った」と話す。

自民党総裁選について記者会見する青山繁晴参院議員=23日、参院議員会館で(佐藤哲紀撮影)

 23日には国会内で記者会見を開き、「別の選択肢を示したい」と意気込みを語った。ただ、立候補に必要な推薦人20人を確保できているかは明言せず、「告示日にそろっている自信はある」と述べるにとどめた。

◆主張は勇ましいが…国民の不満のガス抜きになる懸念

 主張は勇ましいが、実際に立候補できるのか。政治評論家の有馬晴海氏は「自民党の伝統、中心からは逸脱していて、仲間を集めるのは難しいだろう。政治の世界は一匹おおかみでは厳しい」とみる。むしろ、青山氏の言動が国民の不満のガス抜きになることを懸念する。  「国民の間で『青山さんの言うように、もっと自民党変われよ』という声が大きくなれば別だが、『党内でとがったことが言える。懐が深い』と捉えられてしまっては、結果的に自民党にとって、ありがたいだけの存在になってしまう」 

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