28日投開票の衆院3補欠選挙(東京15区、島根1区、長崎3区)は21日、選挙運動期間中、最初で最後の日曜日を迎えた。唯一の与野党対決となる島根1区には、岸田文雄首相(自民党総裁)と立憲民主党の泉健太代表が応援に入り、「政治とカネ」問題などを巡り舌戦を展開した。
「国民の皆さんに大きな政治不信を巻き起こしている。自民党総裁として心からおわびを申し上げる」
21日午後、自民新人の錦織功政氏(55)の応援で松江市郊外のスーパー駐車場でマイクを握った首相は、自民派閥の政治資金パーティー裏金事件について陳謝した。その上で、大企業を中心とした賃上げの動きなどを挙げ、「明日は必ず今日より賃金が高くなる。こういった日本を30年ぶりに実現できるかどうか、これを誰がやるかが問われている」と語った。
首相は街頭演説に先立ち、裏金事件を受けて島根県安来市で開かれた「政治刷新車座対話」に出席。「信頼回復を果たさなければならない。強い覚悟を持って臨む」と理解を求めたが、参加した男性が「党員として恥ずかしい気持ちでいっぱい。総理の島根入りに関して、来てほしくないとか、いろんな声が出ていた」と訴える場面もあった。
県連の関係者は、政権の支持率低迷で地元では慎重な意見があったことを認める一方で、「首相の来県はインパクトがある。プラス思考で考えていく」と強調した。
立憲の泉氏は松江市中心部のJR松江駅近くで、立憲元職の亀井亜紀子氏(58)と街頭に立ち、政権を批判した。
泉氏は島根の伝統芸能「石見神楽」に登場する「八岐大蛇(やまたのおろち)」を引き合いに「(亀井氏が)裏金、古い政治、派閥政治という八岐大蛇を剣を持って退治する。これは立憲だけの戦いではない。党派を超えた大運動を一緒に広げていきませんか」と呼びかけた。地域経済や農業の問題にも触れ、「人口が減り、農業も衰退し、若者が残らない島根になった。そういう政治を一緒に転換しましょう」と訴えた。街頭演説には、立憲の支持団体である連合の芳野友子会長も駆けつけた。
島根は1996年の小選挙区制導入以降、2021年衆院選まで全国で唯一、県内全小選挙区を自民が独占してきた「保守王国」。組織力に勝る自民に対し、立憲陣営は投票率アップと無党派層の取り込みが勝敗を分けるとみている。県連幹部は「党のトップが来県したと話題になるのはありがたい。総力戦というムードになってきた」と歓迎した。【松原隼斗、目野創、東久保逸夫、池田直】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。