東京・九段北の靖国神社で21日、春季例大祭が始まった。小雨が降る中、参拝者は心静かに鎮魂の祈りをささげていた。岸田文雄首相は真榊(まさかき)を奉納した一方、23日までの例大祭中の参拝は見送る方向。安倍晋三元首相以来の対応となるが、先の訪米で米国の戦没者が眠るアーリントン国立墓地を訪れたことで、岸田首相に靖国参拝を望む声もくすぶっている。
若い参拝者の姿も
「胸がいっぱいになった。今の日本があるのは戦死された方たちがいたから。若い人たちも愛国心をもってほしいと思います」
香川県丸亀市の主婦(76)は参拝を終え、こう語った。
首相に対しては「歴代の首相もそうだけど、(真榊を奉納するなど)形だけではなく、心からのことをしてほしい。戦死された人たちを日本の代表として敬ってほしい」と靖国参拝を訴えた。
靖国神社には幕末以来、国に殉じた246万6千柱の戦没者がまつられ、多くが先の大戦の戦死者となる。境内は世代や国籍を問わず多くの人々が訪れていた。
東京都の高校2年の男子生徒(16)はこの日、初めて靖国を参拝したという。「日本のために亡くなられた人たちをまつる神社なので」と理由を説明する。川崎市の国学院大4年の男子学生(21)は「将来は神職になりたい」と話した。
東京都八王子市の男性(75)は春秋の例大祭や正月、終戦の日などに靖国神社を訪れているという。この日もスーツ姿で参拝。「英霊に感謝の気持ちをささげるために来た。心が洗われる気持ちがする」と語った。
「関係なく会いに」
首相は4月9日、国賓として米国を訪れた際、ワシントン郊外のアーリントン国立墓地を訪問し、無名戦士の墓に献花している。
男性は「米国大統領も来日したら、『ぜひ靖国に来ていただきたい』といいたいね。戦争はお互いのこと。米大統領も(アーリントンを訪れた)首相と同じ思いで参拝してほしい」と語った。
また、首相に靖国参拝を願う感情に理解を示しながら、政治問題化されることに違和感を抱く人もいる。
相模原市の男性会社員(52)は「平和であってほしいとの思いで参拝した。まつられている方々に恥ずかしくない生き方をしたいと思う」と話した。首相が靖国を参拝できない状況については「参拝見送りを支持するわけではないが、首相の選択を批判するつもりもない。安定して政策を実行できることが大切だ。まつられている方々も政治問題化されることは望んでいないと思う」と語った。
一緒に訪れた男性会社員(50)も「首相が参拝しないことを声高に批判する人も、玉串料や真榊の奉納すら批判する人がいるが、右も左も偏り過ぎたら意味がない。まつられている人は『そういうこと関係なく、会いに来てくれよ』と思っているのではないか」と語った。(奥原慎平)
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