防衛省は30日、2025年度予算の概算要求を決定した。防衛力の抜本的強化を掲げた整備計画の3年目の要求額は、初の8兆円台で過去最大の8兆5389億円。憲法9条に基づく専守防衛との矛盾が指摘される敵基地攻撃能力(反撃能力)に使用可能なミサイルなどと並び攻撃型ドローンの取得費も初めて計上した。大幅増の2023年度予算では多額の使い残しが判明済みでさらなる増額の必要性が問われる。(大野暢子)

◆「自爆型」の攻撃型ドローンに30億円

衛星コンステレーションのイメージ図(防衛省提供)

 敵基地攻撃能力の関連費用には、2024年度より2500億円多い約9700億円を計上。多数の人工衛星で目標を探知・追尾し、攻撃の精度を高める「衛星コンステレーション」に3232億円を盛り込んだ。他国に届く複数の長距離ミサイルの取得費や、ミサイル配備に必要な火薬庫の増設費用も組み込まれた。  敵基地攻撃能力の保有は専守防衛の理念を空洞化させ、周辺国との軍拡競争を助長し、地域の不安定化を招きかねない。攻撃力の強化は専守防衛との矛盾を拡大させる恐れがある。  30億円かけて調達する予定の攻撃型ドローンは、自ら標的にぶつかって攻撃する「自爆型」を想定。将来的に人を介さず兵器が敵を峻別(しゅんべつ)し、攻撃することができる人工知能(AI)の搭載も検討する。

 衛星コンステレーション 攻撃目標を正確に狙い定めるため、一定の軌道上に多数の小型人工衛星を配備して一体的に運用するシステム。「コンステレーション」は英語で星座の意味。2025年度末から段階的に衛星を打ち上げ、2027年度末の本格運用を目指す。システム構築や運用には民間資金の活用も想定されている。

◆兵器ローンの未払い残高は16兆円に迫る…将来に重い負担

 防衛予算は高額な兵器を分割払いで購入する場合など、支出が複数年度にわたるものもある。要求額のうち、4兆4527億円はこうした「兵器ローン」の返済が占めるほか、新たに買う装備にも2026年度以降、追加で6兆9192億円の支出が必要になる。未払い残高は年々増加し、今回の概算要求額を含むと史上最高の15兆7489億円。将来負担の増大が懸念される。

2025年度予算の概算要求を決定する省議で「防衛力、抑止力のさらなる強化に向けて、必要な事業を着実に実施していかなくてはならない」と述べる木原稔防衛相

 米国に有利な条件で戦闘機などを買う「対外有償軍事援助(FMS)」の総額は世界的な人件費の上昇も影響して、過去3番目に高い9108億円に上る。  2025年度当初予算案には、金額を明示せずに「事項要求」とした米軍再編の関連費などが加わる。2024年度当初予算は概算要求より約2000億円増えており、2025年度の予算額も概算要求を上回る可能性がある。  防衛省では2023年度に使い切れなかった「不用額」が約1300億円あったことが判明している。  木原稔防衛相は30日の省議で「防衛力の抜本的強化に必要な予算を確保することができるよう努力していく」と述べた。 

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