日本列島を横断中の台風10号は9月の自民党総裁選に影響を与えた。「ポスト岸田」を競う候補は危機対応を優先し講演会などの予定を取りやめた。事実上の次期首相を選ぶ選挙で、災害への向き合い方はそれぞれの危機管理能力を試す。

石破茂元幹事長は9月1日に兵庫県豊岡市で講演会を開く予定をキャンセルした。9月第1週を想定していた自身の公約を説明する記者会見は台風を考慮して10日に先送りした。空いた時間を公約に盛り込む数字の精査などにあてる。

河野太郎デジタル相は9月2日に予定した政策発表会を5日に延期した。小林鷹之前経済安全保障相も8月31日に山口県を訪れ安倍晋三元首相の墓参をするなどの日程を延ばした。

小泉進次郎元環境相は9月6日に出馬表明する。当初は8月30日に記者会見を開く予定だったものの、台風の影響を見極めた。高市早苗経済安保相は9月1日に計画していた和歌山県での講演会を取りやめた。

林芳正官房長官は危機管理の担当閣僚として災害対応にあたる。自身の出馬表明は8月27日から先延ばしした。9月3日の開催を模索する。記者団に「事情が許せば」と説明しており、日程はなお流動的といえる。

台風10号は動きが遅く影響を受ける時間が長くなった。党員に政策を訴える地方での講演会や視察の機会を逸すれば、知名度が低い議員には不利になるとの見方がある。

岸田文雄首相(党総裁)は8月15日、現職閣僚の出馬を容認すると明言した。その際「職務に支障のない範囲で堂々と論戦をおこなってほしい」と語った。閣僚に限らず自身の総裁選日程を優先すれば、世論の批判は免れない。

災害対応は自民党にとって鬼門といえる。当時の安倍首相ら政権幹部は2018年の西日本豪雨の際に都内の衆院議員宿舎で議員間の飲み会に出席し批判を浴びた。

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