兵庫県の斎藤元彦知事(46)は6日、職員へのパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題を巡り、県議会調査特別委員会(百条委)の証人尋問に臨んだ。告発者の元県西播磨県民局長(7月に死亡)が公益通報をしたにもかかわらず懲戒処分を受けたことについて、知事は「手続きに瑕疵(かし)はなかった」と従来通りの主張を繰り返した。一方、公益通報の調査結果が出るまで処分を待った方がいいと人事当局が進言したとの証言は「記憶していない」と否定するなど、県職員らの証言との食い違いも目立った。
斎藤知事への尋問は8月30日に続いて2度目。知事は告発文の存在を把握した翌日の3月21日、片山安孝副知事(7月に辞職)ら県幹部を集めて、調査を直接指示したと認めた。「誰が作成したのか、なぜ作成したのか把握することが大事だと指示した」と説明した。
告発者の特定を進めた県の対応については、百条委に出席した専門家から「公益通報者保護法に違反している」との指摘が相次いでいる。知事は「告発文は具体的な供述や信用性の高い証拠がなかった。元局長は内部調査に対し、うわさ話を集めたと説明しており、(保護対象となる)外部公益通報に当たらないと判断した」と強調した。
百条委は6日午前、知事の最側近だった片山元副知事を初めて尋問した。片山氏は3月下旬、小橋浩一総務部長(当時)が第三者機関による調査を知事に進言したが、「知事が『第三者機関は調査に時間がかかる』と否定したと聞いた」と明らかにした。一方、知事は「記憶はない」と否定。知事が公益通報の調査結果を待たずに処分ができないか尋ねたとの証言についても、「全く言っていない」と述べた。
この日は告発文が指摘した知事の贈答品受領疑惑にも質問が及んだ。知事は特産の播州織の浴衣やジャケットを貸与されたり、視察先でカニやカキ、日本酒などを受け取ったりしたと認め、「社交儀礼の範囲内で問題ないと思っている」と説明した。
百条委の奥谷謙一委員長は尋問後の記者会見で、「告発文の作成者の探索は公益通報者保護法に違反している。知事には道義的責任だけでなく、法的責任も生じていると思う」と指摘した。また「県幹部らの証言と食い違いや記憶違いが見えた。引き続き調査で明らかにしたい」と述べた。
斎藤知事は証人尋問後、報道陣の取材に「(証言に食い違いが生じている理由は)分からない。私としては今の認識だ」と語った。
一連の問題を巡っては、県幹部らが内部調査の過程で入手した元局長の私的情報を周囲に漏らした疑いがあるとして、県が調査を検討している。片山氏は「(私的情報を)印刷した紙を人事当局が持ってきたが、持っておくとまずいと思い、シュレッダーにかけた」と疑惑を否定した。【中尾卓英、大野航太郎、稲田佳代】
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