米軍普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市で8日投開票された市長選で、市民は保守市政の継続を選んだ。自民、公明が推薦した元職の佐喜真淳(さきまあつし)氏(60)が2018年以来、6年ぶりに市長に復帰する。佐喜真氏は普天間飛行場の名護市辺野古への県内移設を容認するが、普天間飛行場の返還は移設計画が順調に進んでも12年後。飛行場周辺の騒音被害などは深刻で、選挙戦で言及した早期の負担軽減策を政府との交渉で実現できるかが問われる。
日米両政府が市の中心部にある普天間飛行場の返還に合意したのは1996年。28年が経過したが、その条件が県内移設とされたことで経過は紆余曲折(うよきょくせつ)をたどり、今も返還は実現していない。
これまでの宜野湾市長選でも、政府が進める辺野古移設計画への賛否が繰り返し争点となり、市民は「負担のたらい回し」とも言われる同じ県内への移設計画を認めるか否か、苦しい選択を迫られてきた。
佐喜真氏は選挙戦で、辺野古沿岸部で先に埋め立てが完了した区域に普天間所属機を先行移転させたり、常駐機や訓練の県外への分散移転を進めたりする案に言及。政府に実現を強く求めて、普天間飛行場の返還を待たずに危険性や騒音の軽減などを図ることを訴えた。
しかし、中国の台頭などで沖縄周辺の安全保障環境は厳しさを増しているとして、日米両政府は南西諸島での共同演習や訓練を増やす方針だ。普天間飛行場でも、他の米軍基地所属の「外来機」の飛来が増加しており、これまでに日米が負担軽減策として実施してきた輸送機オスプレイの訓練移転などの効果を「帳消し」にしているのが現状だ。
こうした厳しい状況下でも、佐喜真氏は政府・与党との協調関係をてこに、早期の負担軽減を実現することができるのか。長年、基地負担に苦しんできた市民に、実のある成果を届けることが求められる。【比嘉洋】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。