自民党総裁選。小泉進次郎氏の街頭演説には大勢の人が詰めかけました。その中には「キングメーカー」と呼ばれる人物の姿も…。その意味とは?

■“総裁選”進次郎氏演説に人だかり

午後4時。JR桜木町駅前。街宣車を取り囲むように大勢の聴衆。そこに…
「菅さんです。菅さんが会場に到着しました」
ここ横浜は菅義偉前総理のお膝元です。それからほどなくして…この日の主役、小泉進次郎元環境大臣が姿をみせました。
(菅義偉 前総理大臣)「どうも皆さんこんにちは。衆議院議員の菅義偉であります。なんとしても今度の総裁選挙、小泉進次郎さんに日本の舵取りを託したい。この暑い中、皆さん本当にありがとうございます。皆さんの大きなお力を、その熱意を小泉進次郎候補に与えていただきますことを、お願いをいたしまして、私の挨拶とさせていただきます」
マイクを握ったのは1分ほど。菅前総理が小泉氏支持を明言したのは初めてです。
(小泉進次郎 元環境大臣)「地元生まれ育った横須賀市。お世話になっている選挙区の三浦市。そして先ほど大勢の菅総理をはじめとする地元神奈川県で私のことを応援してくださっている先生方の地元の方々。大勢の皆さんが集まってくれて私は今ここに立っています。9月27日までの総裁選の戦いを全身全霊をもって戦って参りますので、小泉進次郎をどうぞよろしくお願い申し上げます」
今回の総裁選。“キングメーカー”と呼ばれる菅前総理が誰をかつぐのか?その動向が注目されていました。

■“脱派閥”の総裁選キーマン菅氏が動いた

永田町に訪れた“脱派閥の夏”。その裏では総裁選の対応などをめぐり、菅政権を閣僚として支えた有力議員と党内の非主流派を束ねる菅前総理が連携を模索する動きをみせました。
(茂木敏充 幹事長)「日本の将来についてとっても良い話ができました」
こうした中で、菅前総理が最終的に支援を決めたのは小泉氏でした。
(小泉進次郎 元環境大臣)「私の改革プラン、想い、そういったものを一人でも多くの方につなげていきたい、伝えていきたい。できるかぎりやりたいと思います」
小泉氏は菅前総理と同じ神奈川県の選出。菅内閣で環境大臣を務め…前回の総裁選で、菅前総理に「名誉ある撤退」を進言したとされています。
(小泉進次郎氏)「1年間でこんなに結果を出した総理はいないと思います。いっぱい思い出すとね…言葉が浮かんできますけど…」
演説終了後、小泉氏は集まった一人一人とグータッチ。陣営の発表では、7日の銀座の5000人を上回る7000人の聴衆が集まったと言います。開催にあたっては、菅前総理本人からアドバイスをもらっていたといいます。
(今回の演説会を企画した 坂井学 衆院議員)「日本の将来をどうするべきかということで、議論や色々ご指導をいただいている」
水面下で動きをみせる菅前総理について…政治ジャーナリストの後藤謙次さんは次のように読み解きます。
(政治ジャーナリスト 後藤謙次氏)「派閥なき総裁選と言われながら、最も派閥的な動きをしているのは菅さんと言われている。菅グループが派閥化しているんです。自分が失った政権運営の主導権を自分に取り返したい、小泉政権は自分が作ったんだというアピ―ルをしたいのかもしれない」

告示まであと4日。候補者たちは地方票を意識した全国行脚の週末に。小林鷹之氏は北海道北見市のセミナーに講師として出席。
(小林鷹之 前経済安保担当大臣)「自民党のために、今回戦おうとしているわけではありません。日本のために私たちは立ち上がる。世界をリードする日本を作りたい」

一方、河野太郎デジタル大臣も北海道へ。道内有数の米どころで、ドローンや自動運転のトラクターを使ったスマート農業の取り組みを視察しました。
(河野太郎 デジタル大臣)「自動化を進めることで農家の働き方改革にもなりますし、安全面には配慮しながら、自動化の技術がもっと農業の中に取り入れられるようにしなければいけない」

林官房長官は宮崎県の和牛生産農家を訪問。
(和牛の生産農家)「中国への輸出が再開できれば、国の支援がないと本当にみんな離農しなければならない」
(林芳正 官房長官)「資材とかエサ(高騰)対策、これは今までもやってきましたが、和牛の対中国輸出、こういうものにも取り組んでいきたい」

茂木敏充幹事長は愛知県で子育て世代とのミーティングに参加。給食費の無償化について自治体の財源による負担が重いとの意見に対し…
(茂木敏充 幹事長)「(給食費は)基本的には国が責任をもって一律に無償化にしていく方向で進めるべき。私が総理大臣になったら必ずやります」

きのう7日は鹿児島を訪問した石破茂元幹事長。きょう8日は東京の下町・亀有で…
(石破茂 元幹事長)「“寅さん”も“こち亀”もギネスブックにのっている。同じ人が主人公で一番長くやっている“寅さん”。一番長く連載している“こち亀”。私はギネスブックに載ろうと思って(総裁選に)5回出ているわけではない。最後の戦いに挑もうとしている」

こちらは報道陣非公開の講演会に出席した高市早苗経済安保担当大臣を乗せた車。あす9日、出馬会見を予定しています。
Q.月曜日に向けての準備は順調ですか?
(高市早苗 経済安保大臣)「いやー役所の仕事はキツいです。いま。総裁選挙の時にも会議とかあるらしいので。両立できるよう頑張ります」

そして、あさって出馬表明を行う予定の加藤勝信元官房長官。都内で女性エンジニアを養成する施設を視察。
(加藤勝信 元官房長官)「まだまだこういう取り組みがあるということを知らない方が多いというわけですから、これを広げていくということ。こういうことを通じて男女間の賃金格差も縮めていくことができると思いました」

■乱立の総裁選自民以外の動きも影響か

出馬意欲を示している人まで含めれば12人を数える今回の総裁選。政治ジャーナリストの後藤さんは、きのう7日、告示された立憲民主党代表選の結果と28日に任期満了を迎える公明党の次の代表選びが自民党総裁選にも影響を与えるとみています。

(政治ジャーナリスト 後藤謙次氏)「23日の立憲民主党の代表選が先行するので、そちらの代表と見比べてこっち(自民党)はどうなのよというのもあるし、今後の自公関係を円滑にやれる人は誰なんだと、国会議員間の判断基準というのが出てくるので、やはり当日まで分からない」

■菅氏“明言の波紋”…リアルさ増す“10月総選挙”へ動きも スタジオ解説

Q.8日の街頭演説で、菅元総理が「進次郎氏に日本のかじ取りを任せたい」と表立って宣言した狙いは?

(テレビ朝日藤川みな代政治部長)
「演説の場所が横浜だったということで、神奈川県選出の議員が複数参加。ただ、小泉陣営の中では菅氏があまり前面に出ない方がいいとの意見があるので、菅氏が街頭演説をするのは今回限りとなりそう。菅氏は小泉氏の後ろ盾として動いていて、小泉氏の弱点は党内基盤の弱さ。退陣に追い込まれた経験がある菅氏が特に危機感を持って、引き締めを図っている。小泉氏陣営は中堅・若手議員中心のため、票読みに関しても楽観的にならないように、菅氏が他の陣営からの引き剥がしを警戒して票固めを自ら行なっている」

Q.4日後の告示後に全員参加のイベント「地方での合同遊説」が行われるが、盛り上がりや人気は肌感覚でわかるもの?

「2001年の総裁選で、聴衆が最も熱狂していたのは小泉純一郎氏の演説。先輩のベテラン記者に『こんなに熱狂しているのに小泉氏は勝てない?』と聞くと、『盛り上がっている人たちは党員ではないので票にはならない』と解説してくれた。しかし、蓋を開けてみると最有力とみられていた橋本龍太郎氏ではなく、小泉氏が地滑り的に勝利。街頭の熱気が党員に影響を与え、党員から議員へと広がっていった象徴的な選挙」

Q.世間ウケは議員の投票行動にも影響する?

「今回のように特に候補者が乱立すると1回目の投票では決まらず、決選投票になるとみられる。その時に鍵を握るのが議員票。議員の心理として、地方遊説が選挙の顔を選ぶリアルなバロメーターになるので、非常に大きな影響があると考えられる」

Q.乱立で、“選挙カー”に全員乗れるのか、“警備”はどうするのか、“暑さ対策”など想定外の事態も予測されるが

「選挙カーには候補者以外にも、警護のためのSPや司会の議員、選挙管理委員会メンバーなども乗る。1台で10人近い候補者が全員乗れるのかが問題。警備で考えると、屋内で行った方がリスクが低い。ただ前回も前々回の総裁選も、新型コロナの影響で地方での街頭演説が行なえていない。自民党にとってみると久々に党員以外の人の前で街頭演説を行って、党の勢いを取り戻す機会にしたいという気持ちもある。それぞれの開催都市での難しい判断が迫られる」

Q.小泉氏が“できるだけ早期に解散”と話した。永田町は衆院選モードに?

(共同通信社編集委員太田昌克氏)
「7日に話を聞いた自民閣僚経験者は『仮に進次郎氏なら(総選挙は)10月27日になるだろう。だから急いでポスターなどの刷物を準備している』と。決選投票に残りそうな候補が早期解散を打ち出す中、各議員も生き残りをかけて走り出している。対する立憲民主党も、代表選に女性の吉田晴美氏を擁立し、なんとか埋没を免れた。党幹部の1人は『総選挙に向けとにかく立憲民主党も200人擁立』という言い方。目の前の代表選もさることながら、総選挙へ走り出している」

9月8日『サンデーステーション』より

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