高市早苗経済安全保障担当相(63)が9日の自民党総裁選立候補会見で、希望すれば夫婦で別々の姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓制度」について言及した際の発言が物議を醸している。高市氏は「不動産登記は旧姓でできる」と断言したが、法務省民事局は本紙の取材に「旧姓のみでは登記できない」と説明。SNS上でも「ミスリード」との指摘が出ている。

◆小泉進次郎氏の指摘を切り捨てたが…

9日、自民党総裁選への立候補を表明した高市早苗経済安全保障担当相(佐藤哲紀撮影)

 高市氏は会見で「候補予定者の方に『(旧姓では)不動産登記ができない』と答えた方がいたが、不動産登記できる。4月から旧姓でできるようになった」と指摘。民法改正を伴う別姓制度導入を否定し、現行の旧姓使用の慣行拡大で済ませる考えを示した。  高市氏が念頭に置いたのは、6日に出馬会見し、導入を訴えた小泉進次郎元環境相(43)。旧姓使用では解決できない課題として「旧姓では不動産登記ができない」などを例示していた。

◆「併記」は「デメリットでしかない」

 民事局によると、4月から可能になったのは旧姓「併記」での不動産登記。結婚して改姓した人が、戸籍抄本などを提出すれば、旧姓を併記して登記できる。この見直しについて、制度導入を求める一般社団法人「あすには」の井田奈穂代表理事は「改姓した側が婚姻歴や配偶者名字など、個人情報を公示する『併記』はデメリットでしかない」と指摘した。  立命館大の二宮周平名誉教授(家族学)は「通称使用や旧姓併記は、夫婦親子が同じ氏であるべきだという伝統的な家族観が前提になっている。夫婦同姓は、婚姻前の氏を名乗りたい人にとっては人格権の侵害であり、婚姻の自由の侵害。そうした観点での議論を求めたい」と話す。(坂田奈央) 

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