自民党総裁選が12日、告示された。過去最多の9人が名乗りを上げた背景には、派閥の裏金事件を受けて多くの派閥が解散を決め、派閥の締め付けが弱くなったことがある。総裁候補を1人に絞り込んで推すのが従来の「派閥の論理」。今回はその力学が働かず、岸田文雄首相も再選出馬を見送ったため、20人の推薦人を集めさえすれば「誰でも出られる雰囲気」(関係者)になった。  今回の総裁選は、同じ派閥から複数が立候補したことが大きな特徴だ。既に解散した岸田派から林芳正官房長官と上川陽子外相が、解散方針を決めた茂木派からは茂木敏充幹事長と加藤勝信元官房長官が出馬した。過去にも同一派閥から複数が立ったことはあるが、派閥が分裂含みになるため、避ける傾向が強かった。

自民党総裁選に出馬する(左上から右下に)高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各候補(届け出順)

 派閥の解散方針によって議員の動きが流動化したことは、派閥横断的な推薦人集めにつながった。ある候補は「なるべく出身派閥以外の推薦人が増えることを意識した」と打ち明けた。一方で、出身派閥中心に推薦人を集めた候補もおり、派閥の影響は残っている。  首相の不出馬も大量出馬につながった。現職首相が再選を目指す場合、支える立場の閣僚や党幹部は「裏切り者」との批判を恐れ、立候補を控えがちだ。退陣を表明した首相が閣僚に「気兼ねなく論戦を」と伝えたことで、名乗りを上げやすい環境となった。(長崎高大) 

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