自民党本部=東京都千代田区で、平田明浩撮影

 自民党は23日、政治資金規正法の改正に向けた案をとりまとめた。各党が続々と改革案を発表する中、自民は独自案の公表に後ろ向きだったが、野党側が「包囲網」を構築して自民案の提示を要求。公明党からも提示に向けた声が高まり、26日の衆院政治改革特別委員会の初会合直前での方針転換となった。

 「本当に総理が先頭に立って取り組んでいると言えるのでしょうか。いつ提示するのか明言をいただきたい」。22日の衆院予算委員会の集中審議で、公明党の赤羽一嘉幹事長代行が岸田文雄首相に、政治資金規正法改正に向けた自民案の提示を迫った。首相は「我が党としての考え方を取りまとめます。今週、その取りまとめの作業を与党(協議)と並行して行うことを予定している」と、ようやく自民案を提示する時期に言及した。

 予算成立後の後半国会では、自民の裏金事件を受けた規正法改正が最大の焦点となる。自民以外の主要各党は年明け以降、それぞれの方針を公表し、衆院では26日の特別委初会合で各会派が考え方を表明することになっている。

 首相は昨年12月の記者会見で政治の信頼回復に向けて「火の玉となって先頭に立つ」と決意表明し、自民に議員本人への罰則強化や外部監査の強化、デジタル化による透明性向上などを指示。自公は4月16日から、与党案のとりまとめに向けた協議に入った。しかし、議員の責任を強化する「連座制」の導入や、政治資金パーティー券の購入者の公開基準を20万円超から5万円超に引き下げることなどをうたう公明に対し、自民内には「公明との対決構図が強まってしまう」(自民閣僚経験者)などと慎重論も強く、独自案を公表せずに与党案をとりまとめる方針だった。首相周辺も「自民ですったもんだやっていたら、今国会で成立できない」と、独自案の提出には後ろ向きだった。

 しかし、こうした姿勢は野党の批判を勢いづかせた。「自民党だけが案を出していないということは極めて遺憾だ」。19日午前、衆院政治改革特別委員会の理事懇談会後、立憲民主党の笠浩史氏が日本維新の会や共産党、国民民主党など各会派の理事らと並んで取材に応じ、この問題での協調をアピール。

 衆院3補選では立憲への批判を繰り返している維新の党会合でも、遠藤敬国対委員長が「野党は歩調を合わせて、与党はなぜ考え方を提示しないのかというところをはっきりとさせている。同じ土俵で一致結束してまいりましょう」と訴え、国民民主党の玉木雄一郎代表は会見で「多勢に無勢の状況に自民党を追い込むことが大事だ」と気勢を上げた。

 自民党内でも「自分たちが起こした問題に対して案さえも出さないなんて恥もいいところだ。案を出さない限り、国民に議論の過程は何も見えない」(別の閣僚経験者)との声も浮上。公明からも「(自民案が)公にされることが本来のあり方ではないか」(石井啓一幹事長)との声が公然と上がるようになった。

 こうした状況の中、首相は19日午後、官邸で茂木敏充幹事長と面会し、特別委の開催前に自民案を示すことを決めた。首相周辺は「(党内で)自民案をまとめないほうがいい、という意見もあったのは事実だ。しかし、そういうわけにはいかないという場所に今はいる」と、党内外の批判に押し切られたことを暗に認めた。特別委直前の方針転換について、党関係者は「成案を得て、国会での協議に乗せられないと首相は公約違反と言われかねない。何かをやらないといけない焦りが今、この状況を生んでいる」と語った。【田中裕之、源馬のぞみ、野間口陽、安部志帆子】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。