自民党総裁選(27日投開票)に立候補した9人による共同記者会見が13日、党本部で開かれた。裏金事件、解雇規制見直しの是非、岸田政権への評価などをテーマに質疑が行われた。主なやりとりは次の通り。=敬称略(デジタル編集部、政治部)

共同記者会見に臨む(左から)高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各氏=9月13日、自民党本部で(佐藤哲紀撮影)

◆「不記載額を国庫に返納してもらうことで、けじめを」

高市早苗氏=9月13日、自民党本部で

━自民党派閥の裏金事件について。新総裁になれば、新生・自民党として実態解明、真相究明を進める考えはあるか。それをせずに自民党の信頼回復は成し遂げられるか。 高市早苗「厳正な処分を行っているので、追加的な調査を行うということを考えていない。今後、新たな事案が出てきた場合には、党としてしっかりとした再調査を行うことはあり得る。各国会議員は誠実に地元の有権者に説明を尽くし、納得していただける状況をつくる努力が必要だ」 小林鷹之「自民党や捜査当局、それぞれ聴取や捜査が行われてきた。党としては、把握した事実とルールに基づいて厳正な処分を行ってきた。一度決定した処分を覆すということは党のガバナンス上、適切ではない。新たな事案が生じてくるのであれば、調査もあり得る。人事のあり方の刷新、政策実現で結果を出していくということで、国民の信頼回復に努めていきたい」 林芳正「高市候補、小林候補と大筋、同じだ。新しい事案が出てくれば、しっかり再調査、それに基づいた党紀委員会での再審査は当然やっていかなければならない。党のガバナンスコードにも書いてあるように、しっかりとそれぞれが説明責任を果たしていくということ。これはご自身の選挙に向けても非常に大事なことだ」

小林鷹之氏=9月13日、自民党本部で

小泉進次郎「現執行部において厳正な処分が実施された。それに加えて、岸田総理・総裁がトップとしての責任を取るという形で退任することを表明されて、総裁選不出馬ということになった。お金の流れの不透明なところをなくすということで政策活動費は廃止、旧文通費は使いみちの公開、残金は国庫に返納を義務付ける、こういったことをしっかりと実現していきたい」 上川陽子「捜査当局、司法の判断は重い。党が実施した調査、正規のプロセスを経て行われた処分も尊重しなければならない。国会審議で成案を得た改正政治資金規正法をしっかりと守り、二度とこうしたことが起こらないよう、法令遵守、高い倫理観を党全体に浸透させるため全力を尽くす」 加藤勝信「一度決めたこと、みんなが作ったルールに基づいて決めたこと、これは重視すべきだ。検察の捜査が行われ、結論が出ている。党においても有識者を交えた党紀委員会で処分が決まっている。一方、国民の声、怒りをしっかり受け止める必要がある。不記載相当分については国庫に返納する。こういった形で自民党としての責任をしっかり果たしていくことを考えるべきだ。政策活動費、旧文通費については公開していく。未使用分は返していく。第三者機関を作り、政治資金の透明性を図っていく。こういった取り組みを1年以内に、スピード感を持ってやっていく」

林芳正氏=9月13日、自民党本部で

河野太郎「捜査権のない党の調査委員会が、検察がやったこと以上に事実の究明ができるかというところは、現実的には非常に難しい。不記載になった額を国庫に返納してもらうということでけじめをつけたい。非課税にしていただいている政治に関するお金、これは領収書をつけて年末、1年分をしっかり報告する。政策活動費だろうが文通費だろうが、一緒に報告するというのがあるべき姿なのではないか」 石破茂「国民に対する説明責任は、総裁もともに負う。会社のガバナンスを律した会社法はだいたい500条、条文がある。政党のガバナンスを律する法律はない。政党のガバナンスを律する法律の制定は急務だ」 茂木敏充「党の規律、運営体制、財務体質をゼロベースで見直していきたい。政治資金の透明性をさらに高めていかなくてはならない。こういった観点から、政策活動費については廃止したい」

◆「金正恩総書記とは同世代。前提条件なく向き合う」

小泉進次郎氏=9月13日、自民党本部で

━岸田政権の政策や政治姿勢で継承していくべき点と、転換していくべき点は。 小林「継続する部分は多い。特に防衛力の抜本強化、原発の再稼働の方針、そして賃上げを含めたデフレからの脱却の取り組みは、しっかりと進めていかなければいけない。新たな視点として、地方に産業クラスターを作って、地方の雇用機会を増やして、できるだけ所得を上げていきたい。地方から経済を活性化していく『シン・ニッポン創造計画』を打ち出していきたい」 「実質賃金のプラス。物価に負けない賃金上昇の実現。いろんな施策を総動員して、これを確かな流れにしていく。外交関係については、与野党の政権交代があったとしても基本的な部分は変えてはならない。日韓の首脳会談に至る日韓関係の改善を成し遂げることができた。この流れをしっかりと確かなものにしていきたい」 小泉「経済政策、外交政策の基本的な方向性は引き継いでいきたい。ようやくデフレ経済から脱却をして、成長型の経済に移行し始めた。この歯車を回し切るというところで、私が注力をしていきたいところが労働市場改革。ライドシェアも含めて『聖域なき規制改革』を進めていきたい。日本の経済にダイナミズムを取り戻していくこと。これをしっかりとやっていきたい。拉致問題、もはや残された時間は少ない。私が総理になれば(北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と)トップ同士、同世代なわけだから、今までのアプローチにとらわれず、前提条件なく向き合う。新たな機会を模索したい」

上川陽子氏=9月13日、自民党本部で

上川「日米同盟の深化は極めて大切だ。次期大統領ともしっかりと関係を築いていく。内政経済は、成長を進め、その果実を獲得し、所得を再分配するという姿勢を継承する。目指すのは誰一人取り残さない日本。光が当たっていなかった女性、シングルマザー、またシニア世代、生活に困っていらっしゃる方々に目を向けていく。国民との対話を一層進め、多様で包括的で優しく温かみのある政策を進めていく」 加藤「基本的に岸田政権が進めてきた政策をしっかり受け継いでいきたい。賃上げの流れをさらに加速化していく。給食費、出産費用、子どもの医療費の負担ゼロを目指していく。憲法改正については、同じ方向を向いている政党も含め、実現していく。拉致問題についても、一日も早い首脳会談の実現に向け、全ての拉致被害者の即時帰国を目指していく」 河野「賃上げは今後も継続していかなければならない。NISAは非常に良い政策で、もっともっと推し進めていきたい。外交面では安保3文書の改定、防衛力の強化、こうしたところに踏み込んだ。これは海外からも高く評価されている。総理になれば、今度はトップダウンで改革のスピードを上げることができるようになる。これはしっかりやりたい。内政面は孤立、孤独の問題にもう少し焦点を当てていきたい」

加藤勝信氏=9月13日、自民党本部で

石破「産業の国内回帰は、サプライチェーンの維持ということからも考えていかねばならない。地方の衰退が止まらないということも厳然たる事実。デジタル田園都市構想をこれから先も進めていくが、いかにしてこの地方の衰退を止めるかということは、新政権においてさらに強力に取り組まねばならない。安全保障については、おおむね(岸田政権の)方向性は妥当だ」 茂木「内政・外交ともに施策を継承し、発展させていきたい。防衛力の抜本的強化、そして子育て支援策の充実。極めて重要で、引き継いでいきたい。一方、財源については経済状況の改善、成長による税収アップ、税外収入の増加によって十分確保できると考えている。古い財務省的な体質から転換をして、負担増への国民の不安を解消しつつ、新しい日本をつくっていきたい」 高市「憲法改正は継承をしていく。いつ増税があるのか、いつ増税があるのか。このマインドは払拭しなきゃいけない。成長が優先だ。しっかりと経済を成長させていく。これを最優先にしたい」

◆「お金で一方的な解雇、決してあってはならない」

河野太郎氏=9月13日、自民党本部で

━小泉氏は解雇規制の見直しと法案提出に言及したが、真意は。(他候補の)解雇の自由化についての考えは。 「労働者について、その人の希望に応じてどういう制度を作るかこういうことだ。手順に従って議論を進めていく、そういう立場だ」 小泉「『解雇の自由化』を言っている人は私も含め誰もいないと思う。そこを明確にしておく。現役世代の手取りも上げていくためには、正規で雇いやすいという環境をつくっていかなければいけない。大企業で眠っている人材が、これから成長分野で働ける。中小企業、スタートアップ、前向きに移動することができる。求められるところで働ける。そういう環境をつくるには、大企業に対してリスキリング、ジョブカウンセリング、再就職支援、こういったことをしっかりと義務づけ、新しい前向きな労働市場の形をつくっていかなければならない。そういう考え方を丁寧に説明していきたい」 上川「お金で一方的な解雇が自由である、こうしたことは決してあってはならない」 加藤「そこで働いている方々の立場、思い、これを踏まえて議論していくことが大事だ」 河野「国民の所得を増やすための躍動感ある労働市場をつくらねばならない。次の成長分野につながっていくところに、労働力がスムーズに移動できるというのが大事だ。現在、中小企業などで不当に解雇されても何の補償も受けられないという現実がある。不当解雇に対して金銭で補償を受けられるというルールを明確化することが不当解雇を防ぐ」

石破茂氏=9月13日、自民党本部で

石破「同一労働同一賃金という観点から、非正規はなるべく減らしていかねばならないと思っている。非正規の方にも社会保障等々がきちんと提供される、そういう機会を作っていかねばならない。そういうことを段階的にやっていきたい。解雇規制の緩和というが、これは普通解雇なのか、整理解雇なのか、どの解雇なのかということもきちんと議論されないと議論が緩慢になる。よく精査をした上で答えを出していきたい」 茂木「人生100年時代になり、転職することが普通だという社会を作っていくことが先決だ。このためにスタートアップをもっと支援をしていく。副業を解禁していく。ハローワークの抜本改革を進める。こういったことが必要だ」 高市「整理解雇の場合、労働判例が積み上がってきている中で、4つの要件というのが確立されている。これを非常に短い期間の議論で立法して、その判例を覆すというのは容易なことではない」 小林「労働市場の流動性を高めていくことは大切だが、安易な解雇規制の緩和は働く人を不安にさせかねないし、格差を固定しかねないので慎重であるべきだ。今や超人手不足の時代なので、どの分野も人の取り合いになっている。労働移動の円滑化のために『解雇をより自由にしていく』という従来の議論は、前提となる環境が変わってきているのではないか。非正規として働いている方々の『正規として働きたい』という思いに応えていくことが重要だ。そのためのスキルアップやリスキリングをしっかりと国が後押ししていくことは、当然やるべきだ」

◆「説明責任は党として、総裁としても果たすべき」

茂木敏充氏=9月13日、自民党本部で

━政治資金収支報告書に不記載のあった議員への(選挙時などの)対応について。 上川「党の公認を決める際には、手続きを踏んだ形で、最終的に支部長(に選任)、また推薦、公認という形の判断をしていく。その際、課題や問題が発生した場合には、それぞれの当該議員が説明責任をしっかり果たしていく。一度決めたからそれでそのまますんなりといく、というものでは必ずしもないのは当然のことだ」 加藤「処分と公認とは別の話だ。公認は選挙の直前に決まる。これは厳正に判断される。当然のことだ」 河野「国民の納得感ということから、私は不記載の金額の返還を求めたい」 石破「公認については(党本部の)選対委員会で、地域においてどれだけ支持をされているかということを中心に、当選の可能性という点においてさまざまな議論がなされる。説明責任は当該議員とともに、党として、総裁として果たすべきものだ」 茂木「公認の決定は、解散が決まった時点で、地方の声も聞きながら厳正に判断をしていきたい」 高市「まさに今、茂木候補がおっしゃった通りだ。解散になった後、党の方で公認の可否を決めるということになる」 小林「公認はしかるべき時点において、選挙に勝てるのか、つまり有権者の方から十分な信頼を得られるのかという観点を含めて、総合的かつ厳正に党として判断すべきものと考えている」 「公認については、茂木候補がおっしゃった通りだ」 小泉「対象の議員については、説明責任を果たしているか、再発防止に取り組んでいるか、地方組織、地元の有権者の声も踏まえ、新執行部のもとで厳正に判断をしたい」

共同記者会見に臨む(左から)高市早苗、小林鷹之、林芳正、小泉進次郎、上川陽子、加藤勝信、河野太郎、石破茂、茂木敏充の各氏=9月13日、自民党本部で



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