自民党総裁選に立候補した林芳正官房長官(63)の陣営は18日、高市早苗経済安全保障担当相(63)が配布した政策リーフレットの影響で、林陣営の党員が投票先を誤解するなど混乱が生じているとして、党選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)に文書で報告し、対応を求めた。一方、高市氏側も反発を強めており、「カネのかからない選挙」を目指した総裁選は「泥仕合」の様相を呈している。
林陣営で事務局長を務める古賀篤衆院議員(旧岸田派)によると、林氏を支援する議員が地元選挙区で、党員に林氏への投票を依頼したところ、既に高市氏に1票を投ずる投票用紙を発送済みだった事例があった。
この党員は政策リーフレットが高市氏だけから届いたため、今回の総裁選では地元議員が高市氏支持で動いていると勘違いしていたという。古賀氏は記者団に「投票し直すことは現実的にできない。取り返しがつかないことになっている」と述べ、選管に対応の検討を求めた。
岸田文雄首相も17日、森山裕総務会長らと会談し、高市氏のリーフレット送付問題について協議。選管に追加対応を検討するよう申し入れた。
これに対し、高市氏の地元事務所の担当者は18日、奈良県庁で記者会見を開き、「異常性を感じた。執行部が選管に圧力をかけることは考えられない。権力者としての矜持(きょうじ)と自制を求めたい」と批判した。
担当者によると、送付したのは高市氏の政策などを紹介する「国政報告レポート」で、全国の党員ら30万~35万人に送った。選管が今回のルールを党内に周知した9月4日、委託業者に確認したところ、既に発送を完了したと伝えられたという。担当者は「総裁選に関することは一言も書いていない」とし、ルール違反ではないと強調した。
ただ、報道各社の世論調査で支持拡大の兆候がみえてきた時期だけに、高市陣営からも「またこの問題が盛り上がってしまう。静かにしておくべきだった」と自重を求める声も上がる。
高市氏を支持するベテランは「泥仕合になって、このままだと自民党全体が沈んでしまう」と頭を抱えた。
選管は11日、リーフレット送付について高市氏に口頭で注意したが、19日にも会合を開いて追加の対応をするかどうか協議する。【竹内望、川畑岳志】
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