長崎県の大石賢吾知事、長崎市の鈴木史朗市長と面会した後で、報道陣の取材に応じる岸田文雄首相=首相公邸で2024年9月21日午前8時39分、新宮巳美撮影

 岸田文雄首相は21日、長崎県の大石賢吾知事、長崎市の鈴木史朗市長と首相公邸で面会し、長崎原爆に遭ったものの被爆者とは認められていない「被爆体験者」への支援を拡大する方針を伝達した。面会後、首相が記者団に明らかにした。

 9日の長崎地裁判決で被爆者と認められた15人に限定せず、被爆体験者全員を対象にするとした。一方、訴訟対応としては政府は控訴する方針を示した。

 首相は面会後、記者団に「被爆体験者を対象に行われている事業を抜本的に見直し、被爆者と同等の医療助成を行う」と言及。「訴訟原告にかかわりなく、これまで被爆体験者とされてきた方全員を対象に、精神疾患の発症は要件とせず、限定的な疾病に限らず幅広い一般的な疾病について被爆者と同等の医療費を助成する事業を創設する」とも語った。年内のできる限り早い時期からの適用に向け、長崎県、長崎市と詳細を詰めるとした。

 訴訟への対応を巡っては、同席した武見敬三厚生労働相が、控訴せざるを得ないと説明したという。

 長崎の被爆者対応を巡り、国は爆心地から南北約12キロ、東西約7キロの援護区域にいた人たちを被爆者健康手帳が受け取れる「被爆者」、区域外の東西約7~12キロにいた人たちを「被爆体験者」とし、手当や医療費負担などで差をつけてきた。

 被爆体験者44人(うち4人死亡)が被爆者健康手帳の交付を求め長崎県と長崎市を訴えた訴訟では長崎地裁が9日、爆心地東側の旧矢上村、旧古賀村、旧戸石村(いずれも現長崎市)にいた15人に手帳の交付を命じる判決を出した。首相は地裁判決に先立つ8月、「合理的な解決」に向け対応策を調整するよう武見厚労相に指示。今月24日の控訴期限を意識した調整が政府内で進められていた。【園部仁史】

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