岸田文雄首相は21日(日本時間22日)、米東部デラウェア州ウィルミントンで開催された日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の首脳会議で、4カ国の協力を重視する姿勢を改めて鮮明にした。21年10月の就任後、同盟国・米国に加え、自由や民主主義の価値観を共有する同志国との協力深化を進めた路線を次期政権へ引き継ぐ意図がありそうだ。
クアッドは首相の外交姿勢を象徴する枠組みだ。2021年に首脳級に格上げされたクアッドに出席するのは、23年5月の主要7カ国(G7)首脳会議に合わせて地元広島で開催したのに続き、今回が3回目。台頭する中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、海洋安全保障やサイバーなど幅広い分野での協力を進めてきた。
首相は10月1日に退陣する見通しで、退任直前の外国訪問は異例だ。首相は首脳会議の冒頭、「私は日米豪印の取り組みを一貫して重視してきた。今回の会合は、首相として最後となる今回の外国出張において参加するに最もふさわしい会合だ」と強調した。
クアッドの枠組みで、特に腐心したのがインドとの「つなぎ役」(首相周辺)を担うことだった。インドは、ロシアと友好関係を保つ一方、国際的な影響力を強める中国をけん制したい思惑では日米豪とも一致する。首相はこうしたインドの立場を理解し、23年5月の前回会議と前々回22年5月の東京での会議の共同声明では、ロシアを名指しで非難する文言は盛り込まれなかった。
第2次安倍政権で4年半以上外相を務めるなど、日本外交を長年担ってきた自負を持つ首相としては、こうした丁寧な調整が必要となるクアッドの枠組みを次の政権にも着実に引き継ぎたい考えだ。また首相はクアッドに合わせて、ウィルミントンにあるバイデン米大統領の私邸でバイデン氏と会談し、これまで築いてきた個人的な信頼関係の深さも印象付けた。
自民党総裁選(27日投開票)は候補者9人による混戦模様で、1回目の投票では決まらず決選投票になるとみられる。米国出発に先立ち、首相は公邸で記者団の取材に応じ、総裁選で誰を支持するのかを問われ「最後まで各候補者の政策、考え方をじっくりと聞いた上で、自分自身の1票を判断したい」と強調した。自身の外交路線を継承してくれる人物は誰なのかを見極めたい思いをにじませた。【ウィルミントン影山哲也】
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