24日の特集は、熊本市の『市電延伸』と『庁舎整備』についてです。

大西市長は、今開かれている市議会に両事業の方向性を決める予算案を提出していて、議会の判断が注目されています。

まず『市電延伸』です。議論は9年前、2015年度に『自衛隊ルート』と『南熊本駅ルート』の2つに絞られて以降、具体化していきます。

そして概算事業費、費用便益などを比較した結果、『自衛隊ルート』を優先することが決定。今議会に『仮称・東町線』として関連予算案が提出されるに至りました。

公共交通の利便性向上を目指す『市電延伸』の計画をめぐり大西市長は、今議会に実施設計経費4億2000万円の予算案を提出しています。

【尾谷いずみキャスター(健軍町電停)】
「延伸が計画されているのはここ健軍町電停から熊本市民病院までおよそ1.5キロのルートです」

『仮称・東町線』は、付近に区役所や小・中学校など公的施設が多く立地しています。

概算事業費は約141億円。これまで示していた135億円から6億円増加する見通しが8月、明らかになりました。

開業予定は2031年度です。市は、延伸区間のうち自衛隊中通りは『複線』で整備し、熊本高森線については安全性を考慮し『一部単線』とする方針を示しています。

【9月12日・特別委員会 齋藤 博 委員(自民)】
「市民の意見を受け止め慎重に計画を進めてほしい」
【藤山 英美 委員(熊本自民)】
「おおむね賛成」
【上野 美恵子 委員(共産)】
「延伸は必要性を認めるという立場です」

12日の特別委員会で、議会は全会派が、計画を了承する姿勢を示しました。

会期末に正式な議決が得られれば、着工に向け前進することになります。

「現行法の耐震基準を満たしておらず、今後震度6強以上の地震があった場合耐えられない可能性がある」

熊本地震翌年の2017年度に市が行った調査から始まった建て替えをめぐる議論。

議会は2019年度に特別委員会を設置し、本格的な議論を始めました。

【2020年3月・自民党・津田 征士郎 議員(当時)】
「理念が一致しないといい方向に向かわない」

2020年、建て替えをめぐって最大会派・自民党が、推進派が『自民党』、慎重派が『熊本自民党』となり袂を分かつ事態に。市議会・自民党会派の分裂は現在も解消されていません。

一方、大西市長は2021年、学識経験者による『有識者会議』を設置。

【2021年2月・大西市長】
「ゼロベースでいろんなことをもう一回、考えていく。市民の中にも『本当に建て替えないといけないの?』『どうなの?』と。その点について客観的に専門家に聞くということ」

2年後、有識者会議が示した答申は。

【2023年5月・有識者会議の答申 平田 直 会長(東大名誉教授)】
「建て替えるべきであるという結論に至りました」

【2023年6月本会議・大西市長】
「総合的に勘案した結果、本庁舎等を建て替える方針で進めてまいりたい」

有識者会議の答申を受け『建て替え』の方針を表明した大西市長。同じ議会でこうした考えも述べました。

【2023年6月議会・大西市長】
「建て替えが起爆剤となり、今後のまちの構成に大きな変化を呼び込むような『面的な視点』での検討を進め、市全体の活性化につながるよう戦略的に取り組んでまいりたい」

大西市長が打ち出した建て替えによる街の活性化。これ以降、議会は建て替えの是非にとどまらず、現庁舎の跡地活用など議論の視点を広げることになっていきました。

そして今年6月。

【6月・庁舎特別委で大西市長】
「周辺エリア一帯のまちづくりも実施したい」

大西市長は本庁舎と議会棟の建設地を『NTT桜町の敷地』に、7月には中央区役所について『花畑町別館跡地』にそれぞれ移転建て替えとする考えを表明しました。

概算事業費は約616億円、このうちの市負担額は合併推進債を活用できれば約255億円とされています。

市は完成時期は示していないものの調査・設計などに3年から4年、その後の建設に3年から4年程度を見込んでいます。

【6月24日特別委・大石 浩文 委員(自民党)】
「中心市街地の一体性とか回遊性を高めることについて踏み込んだ取り組みができないか」

【6月24日特別委・大西市長】
「経済界からもいろんな意見を聞いてきた。『移転した場合は現庁舎の場所にランドマーク的なビルを』とか『熊本にはないラグジュアリーなホテルが必要ではないか』とか出されている」

市は新庁舎の基本設計・実施設計などを業者に「一括して発注」する方針を示し、今後4年間の『債務負担行為』として合わせて約18億8400万円、そしてその業者選定のための予算案240万円を今議会に提出しました。

設計などの『一括発注』は、『合併推進債』活用の要件を満たすためで、今年度中に業者と契約を結ぶことが不可欠。そのための議決のタイムリミットはこの9月議会とされています。

【9月18日総務委員会の予算案審議 澤田 昌作 委員(熊本自民)】
「一括発注方式ということだが通常は段階的に積み上げるものだ」

【市庁舎建設課 大津 仁哉 課長】
「合併推進債の活用が可能になるのは財政上の大きなメリット」

【澤田 昌作 委員(熊本自民)】
「総事業費が616億円。これが大きく変わってくる、上回ってくる場合の対応は?」

【市庁舎建設課 大津 仁哉 課長】
「基本的な部分は想定できていると考えている。ただし労務単価などの増加や建設資材の上昇の影響で事業費が増加することや、検討を進める中で追加での調査や検討が必要になる場合があり、プラスアルファとしている」

【澤田 昌作 委員(熊本自民)】
「まだまだ今後の進め方には不透明な部分がある。市民の理解を得るべく市による説明がまだまだ必要」

庁舎をめぐっては議会以外の動きもあります。

市民グループが建て替えの賛否を問う住民投票条例の制定を目指し署名活動を展開。

10月28日までに有権者の50分の1に当たる約1万2000人の署名が集まれば、市長に住民投票条例の制定を請求できることになります。

【市庁舎建設の賛否を問う住民投票をすすめる会 西川 文武 代表】
「僕らの手の届かないところで市政がどんどん建て替えに向かっているので、それを疑問に思う人もいると思う。そこを牽制できる制度が必要と思うので、条例の制定はとても大事じゃないかなと思います」

市民グループの動きも横目に事実上、建て替えの可否を判断することになる節目の議会。明日25日の予算決算委員会で予算案の締めくくり質疑が行われ、会期末27日の本会議で最終的な採決が行われます。

『市電延伸』『庁舎建て替え』両事業の進展に大きく影響する予算が盛り込まれた今回の一般会計補正予算案。このうち『庁舎建て替え』への考えを含む補正予算案に賛成か反対か、24日までの取材の結果をまとめました。

自民党、市民連合、公明党、そして無所属の4人、合わせて32人が『賛成』。共産党、それに無所属議員の合わせて3人が『反対』です。

ただ明日の予算決算委員会の質疑次第では態度が変わる可能性があるとする議員もいます。

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