今秋にも想定される衆院選を前に、2021年の前回選で共闘した立憲民主党と共産党の溝が広がっている。候補者を一本化するため愛知では前回、全15選挙区(現在は16選挙区)のうち共産が独自候補を立てたのは5選挙区にとどまったが、今回は13選挙区で擁立。連携に慎重な姿勢を見せる立憲側に共産側は憤りを隠さない。
「前回の総選挙のような野党共闘は前提が崩れた」。26日、愛知県庁で開かれた記者会見で、共産党県委員会の石山淳一委員長はそう強調した。
同県委員会はこの日、立憲との共闘のため前回選では独自候補の擁立を見送った愛知12区など、3選挙区に新人を立てると発表。県委員会は先月下旬から会見を4度開き、計8人の新人候補の擁立を明らかにしている。
前回は「立憲共産党」批判も
前回選では、立憲は共産などと共通政策を打ち出し、政権を取った場合には共産と「限定的な閣外協力」をすると合意。愛知県では立憲や共産などは九つの選挙区で候補者を一本化し、うち6選挙区では事実上、自民対立憲の一騎打ちに。選挙区での立憲の当選者は3人だったが、比例では99%を超える惜敗率で復活当選を果たした元職もいた。一方、両党の接近は立憲の支持母体・連合からの反発が強く、与党からは「立憲共産党」と批判された。
こうした経緯もあり、今月23日に投開票された立憲の代表選では候補者から「包括的な連携は難しい」などと共産と距離を置く発言が相次いだ。共産の小池晃書記局長は17日の会見で、「あまり(共闘を)やろうとする意思が伝わってこない。必要なところには必要な候補者を立てていく」と憤り、各地で候補者擁立が続いている。
次期衆院選では愛知16選挙区のうち、現状では9選挙区で立憲と候補者が競合する見通しだ。前回選で得られた共産の票が減ることに懸念を示す立憲県連関係者もいるが、別の関係者は「もともとは異なる政党。共闘頼みではなく立憲の色を出す良いタイミングととらえたい」と話す。
これに対し、共産の地方議員の一人は「旧統一教会との関係や裏金の問題など、自民への不信感は大きく渦巻いている。野党にとって今が大チャンスのはずなのに……」と嘆く。
「共闘しすぎ」で注意を受ける候補者も
こうした状況の中、愛知10区では独自の「共闘」が実現している。立憲から出馬予定の弁護士で新人の藤原規真さん(46)は昨秋から毎週、共産や社民党の関係者と共に街頭活動する。
愛知10区は前回選で立憲の藤原さんや共産の候補者ら5人が出馬。自民が勝利したものの、立憲・共産・れいわ新選組の票を合わせると自民の票を上回る結果だった。
藤原さんは前回選後、共産などと歩み寄りを図り、一部の地方選挙では共産と協力して候補者を応援。昨年11月には、共産候補と並んで街頭演説をしたとして、立憲は「他政党を利する行為」などと判断し、藤原さんを注意した。
藤原さんは連合が共産との連携に否定的なことから、次期衆院選では連合からの推薦は求めないことを決めている。「大同小異で自公政権と真っ向から勝負していく。野党がまとまらなければ、今の政治を変えることができない」と話す。【加藤沙波】
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