27日投開票の自民党総裁選で石破茂元幹事長が新総裁に選出された。経済政策はどう変わるのか。
選挙戦では税を巡る発言が注目を浴びた。告示前の2日には株式の売却益など金融所得への課税強化を唱えた。また、21日のインターネット番組では「法人税は引き上げる余地がある」と発言。「税負担する能力がある法人はまだある。もう少し負担をお願いしたい」とし、所得税も負担能力のある個人に負担増を求める余地があるとするなど税の応能負担の原則を掲げる。
だが、金融所得課税の強化は、配当などの利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)の拡充など岸田政権が進めてきた「貯蓄から投資へ」の流れに逆行するとの指摘が他候補から噴出。「新NISA、iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)への課税強化は毛頭考えていない」と釈明に追われた。そもそも、金融所得課税の強化は2021年に岸田文雄首相が打ち出して、株価が大幅に下落する「岸田ショック」に見舞われた経緯がある。市場への説明を含め、今後の対応に注目が集まる。
物価高対策については、テレビ番組で「賃金を上げていくことが、一番即効性がある」とする。財政再建を進めるべきだとの主張もしており、10月使用分で終了予定の電気・ガス代の補助の更なる延長には慎重な立場だ。一方で、生活必需品の値上がりや住宅ローンの金利の上昇による影響に対して緊急対策を講じるとしている。
賃上げの環境整備や価格転嫁対策を強化するため、下請け法の改正案を次の通常国会へ提出する方針も示している。企業の生産性向上を支援するなどし、20年代に最低賃金を全国平均1500円にまで引き上げることも掲げる。現政権の目標である「30年代半ば」からの前倒しとなる。
デフレ脱却を最優先とした投資を進めるとしており、成長戦略は岸田路線を継承する見通しだ。石破色があるのは、「日本経済の起爆剤」と位置付ける地方創生だ。デジタル技術によって東京一極集中を是正して企業の地方進出を後押しし、地方での雇用創出などにつなげる。観光産業も地方経済活性化の柱に据える。「新しい地方経済・生活環境創生本部」の創設を掲げ、人口減少対策に力を注ぐ。
アベノミクスの功罪についても「(安倍政権時に)私も2年間、幹事長をしていた」として検証する姿勢を示している。内閣官房には現在の経済財政諮問会議に代わる、経済・金融・市場などの危機対応を担う組織の創設を検討する。日銀や海外政府との連携強化を狙う。
エネルギー政策については当初、「原発ゼロに近づける」と主張していたが、その後は「安定したエネルギー供給が国家の生命線」と軌道修正している。地熱や小水力発電を推し進め、省エネも最大限進めると主張する。【山下貴史】
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