自民党総裁選では過去最多の9人が立候補したものの、社会保障制度に対する論戦はさほど深まらなかった。新総裁に選出された石破茂元幹事長は23日、党主催の政策討論会で現状の社会保障制度について尋ねられ、「年代で差があるが、国民の実感としては高負担・中福祉と思っている」と述べるなど、現役世代を中心に負担減を図りたい意識があるとみられる。
石破氏は「(健康)保険証1枚で医療にアクセスできる国はたくさんはない。どう続けるかは真剣に考えなければならない」とも発言し、社会保障制度の持続性を重視する立場を示した。総裁選では2020年代に最低賃金の全国加重平均1500円を達成することや結婚・出産支援に重点を置いた少子化対策の拡充なども訴えた。
ただ、具体的な制度改正などには踏み込んでいない。厚生労働省のある幹部は「社会保障政策については、岸田(文雄)政権を踏襲するのではないか」と指摘。年代にかかわらず能力に応じて負担する「全世代型社会保障」を進める政府方針の転換はないとみる。
一方で、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」への移行時期(12月2日)を巡り、「期限が来ても納得しない人がいっぱいいれば、(現行保険証との)併用も選択肢として当然だ。廃止によって不利益を被る人がいないように努めるのが政府の仕事だ」と述べた。移行時期の見直しの可能性を示唆するなど、トラブルが相次いだマイナ保険証への対応に注目が集まる。【神足俊輔】
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