皇居での認証式のため首相官邸を出る新閣僚たち=2024年10月1日午後6時10分、宮武祐希撮影

 衆院選の投開票日が27日に固まり、都内でも各党の準備が本格化する。都内全30選挙区のうち、自民党は計28選挙区で候補者を立てる方針だ。立憲民主党など野党側は候補者の一本化に勝機を見いだすが、共闘がどこまで実現するかは不透明な情勢となっている。【山下俊輔、島袋太輔、原田啓之】

 「党内野党と言われていた人が総理になったんだから、自民党は変わるだろう。議論の組み立て方は分かりやすいので、都民や国民には理解されると思う」

 石破茂氏が首相に選出された1日、自民党都連の幹部は選挙戦を念頭に、石破氏への期待をこう語った。

 自民は、公明党が擁立する第29区と、党員資格停止処分を受けた下村博文元文部科学相が立候補する第11区を除いた計28選挙区で候補者の擁立を目指す。現職議員が空白の選挙区では、公募などで候補者が決まる見通しだ。

 選挙戦では、派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風にさらされる自民が党勢を回復できるかが焦点となる。東京の選挙区では、政治資金収支報告書への不記載が発覚した萩生田光一元政調会長、下村氏、丸川珠代元五輪担当相に注目が集まる。

 ある自民関係者は「街頭演説で野党側に裏金や統一教会と連呼され、影響が出てくるだろう」とみる。そのうえで「野党側が候補者を一本化すれば、厳しい戦いになる」と警戒感を示した。

 ただ、野党側の候補者の調整がどこまで進むかは未知数だ。現時点では立憲、共産党ともに20前後の選挙区で候補者の擁立を検討している。

 立憲都連会長の長妻昭代表代行は「自公を過半数割れに追い込むことが目標だ」と掲げ、「できる限り与野党の一騎打ちの構図に持ち込みたい」と語る。

 しかし党内には、安全保障政策などで隔たりのある共産との連携は有権者の理解を得にくく、支持拡大につながらないとの指摘が根強くある。

 7月の都知事選では立憲、共産、社民党が元参院議員の蓮舫氏を支援したが、蓮舫氏の得票は当選した小池百合子氏の半分以下にとどまった。得票順では石丸伸二・前広島県安芸高田市長に次ぐ3番目だった。

 一方の共産党もジレンマを抱える。ある党幹部は「安保法制への考えが異なる野田佳彦代表は、野党共闘の土台を覆すような人物だ」と語気を強めるが、「我々は単独では政権交代できないのだから、本当は共闘したい」と本音をのぞかせる。

 この幹部は「東京では野党共闘の枠組みを続けてきた。代表が誰であっても、東京の選挙区ではギリギリまで話し合いを続けたい。立憲と共倒れになることだけは避けたい」と語った。

 このほか、日本維新の会は現時点で少なくとも計21選挙区での候補者擁立を検討している。21年の前回選では、25選挙区のうち17選挙区に擁立していた。

 また、国民民主党は少なくとも計11選挙区、れいわ新選組や参政党も複数の選挙区で候補者の擁立を準備している。

東京都、30選挙区に増えてから初の総選挙

都内の小選挙区の区割り(30選挙区)

 東京の選挙区は、「1票の格差」を是正するため2022年に区割りが見直され、25から30選挙区に増えた。今回は30選挙区での初めての総選挙となる。

 1票の格差とは、議員1人当たりの有権者数が選挙区によって違うことから、1票の重みに不平等が生じる現象を指す。議員1人当たりの有権者数が多い選挙区ほど、1票の価値は低くなる。

 22年には、1票の格差が2倍未満に収まることを目指した改正公職選挙法が施行。15都県で小選挙区数を「10増10減」し、これらを含む25都道府県の140選挙区の線引きを見直した。

 都内で定数が増えたのは、1994年の小選挙区比例代表並立制導入以来、初めてのことだった。区割り変更によって選挙区だった地域が隣の選挙区に移ったり、選挙区が縮小したりした。長年の地盤が別の選挙区に移り、苦戦を覚悟する候補予定者もいる。

 変更に伴って区割りは整理され、選挙区が分割される自治体は「14区3市」から「7区1市」に減った。分割が続く7区1市は、世田谷、杉並、板橋、練馬、足立、江戸川、大田各区と八王子市。

 全国で計176人の議員を選ぶ比例代表でも定数の「3増3減」が行われ、全国11の比例ブロックのうち、東京ブロックの定数は2増の19となった。【内橋寿明】

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