<経済界>
<労働組合>
「防災省」創設 専門家 “人員確保が課題”
専門家「早期解散 政治家としてのイメージ傷つけるのでは」
石川 輪島市民 “復旧や復興に力を入れてほしい”
拉致被害者の家族会代表「親世代 健在なうちに再会を」
経団連の十倉会長は「新内閣は、優れた識見を有する実力者が適材適所で登用されている。政治の刷新と安定を望む国民の負託に応え、政策の強力かつ迅速な遂行が期待される」というコメントを発表しました。そのうえで「成長と分配の好循環を通じたデフレからの完全脱却とともに、原子力の最大限活用などをはじめとするエネルギー政策の推進、将来不安の払拭(ふっしょく)に向けた公正・公平で持続可能な全世代型社会保障制度の構築などにしっかりと取り組んでもらいたい。また、選択的夫婦別姓の導入をはじめとする多様性を尊重する社会づくりも求められる。経団連は、石破新政権との連携を深めつつ政策遂行に全面的に協力していく」ととしています。
経済同友会の新浪代表幹事は「石破総理大臣は地方創生に対して知見を持っているので、東京一極集中から自然豊かな日本、地域が発展できるようにしてもらいたい」と述べ、地域の活性化をいっそう推進していくことに期待を示しました。そのうえで「実質賃金が上がってきた中で、きょうから値上げも起こってきており、消費を活性化させてほしい。また、賃金が上がっていくことやDXを生かした生産性の向上にも取り組んでほしい」と述べました。一方、政治とカネの問題について「自民党員と国会議員による総裁選挙なので国民の負託を得たというわけではない。国民の負託を得るために解散して選挙するということだろう」と述べました。
日本商工会議所の小林会頭は「わが国経済は停滞から成長への転換点を迎えており、この好機にデフレマインドから脱却し、持続的な『成長型経済』を実現することが急務である。実現には、『潜在成長率の底上げ』が不可欠であり、官民挙げて生産性向上に取り組むことが重要である。地域経済の再生・活性化には、稼ぐ産業の育成や良質な雇用の創出など、『地域の経済循環』を強く、太くするための取組みが極めて重要だ。新内閣には、力強いリーダーシップと実行力を発揮し、経済の構造改革を実行していくことを強く期待する」というコメントを発表しました。
連合の清水秀行事務局長はNHKの取材に対して「雇用が安定して日本経済が循環していくことが重要だ。新内閣には働く人のスキルアップや処遇の改善につながることを大いに期待をしたい」と述べました。そして、賃上げや最低賃金の引き上げに向けた取り組みが重要だとして、「中小企業を含めた企業への支援策や、地方自治体の財政支援など環境の整備を最大限に努めてほしい」と話していました。また、男女間の賃金格差の是正や、働き方の見直しや子育てに関する制度についても議論を交わし、必要な改正を行っていくべきだとしています。
繊維化学、流通、サービス業などおよそ2200の組合でつくる産業別労働組合「UAゼンセン」の永島智子会長は「最低賃金も含めて、正社員、パート従業員などすべての労働者の賃金が上がることが大事なので、新内閣も賃上げの流れを止めずに継続してもらいたい」と述べました。UAゼンセンにはおよそ190万人の組合員がいますが、中小企業や非正規雇用で働く人が多いことを踏まえ、永島会長は「女性が家事、育児、介護などでキャリアを分断せず安心して仕事を続けられることが大事だ。女性が実力に見合って稼ぎたいだけ稼げるようになり、選択肢の幅を広げていくため新政権にはいわゆる『年収の壁』の問題の解決に向けて真正面から取り組んでもらいたい」と求めました。その上で、「労働者が心を病むカスタマーハラスメント、いわゆる『カスハラ』も看過できない問題で政府には法制化に向けて一歩も二歩も前進してほしい。いろいろな課題がある中で政策の実現は待ったなしで、労働組合としても是々非々の姿勢で臨みたい」と話していました。
石破総理大臣が訴えてきた「防災省」の創設について、新たな省庁の必要性を訴えてきた専門家は議論の活発化を期待する一方、既存の省庁との間でどう調整を行って人員を確保できるかが課題だと指摘しています。
“内閣府防災は出向者多い 新たな省庁で対策積み重ねを”静岡大学防災総合センターの岩田孝仁特任教授は、これまで静岡県の職員として30年以上東海地震対策などに携わり、国とのやりとりを続けてきました。内閣府防災担当の現在の体制について、必要に応じて人員を増やしてきたことは評価する一方、各省庁からの出向者が多く2、3年ほどで元の省庁に戻るため経験が蓄積されないことが課題だとしています。そのため南海トラフ巨大地震など大規模災害に備えるには「防災省」のような新たな省庁を設けて平時から対策を積み重ねるとともに西日本や東北、北海道など複数の場所に拠点を設けることも望ましいと指摘します。岩田特任教授は「これからの日本社会は南海トラフ巨大地震や首都直下地震など国難級の巨大災害に遭遇する可能性が非常に高い。そうした事態になったときにきちんと対応できるためには今から責任ある組織を作ってもらいさまざまな予防対策、それから応急対策に向けた体制整備を進めていただきたい」と話しています。“新たな省庁作るなら人員確保が最大の課題”一方で、仮に新たな省庁を作ったり組織を拡大したりする場合、最大の課題として挙げているのは人員の確保です。国土交通省や総務省、気象庁、農林水産省など現在内閣府に出向させている省庁をはじめ、各省庁との間でどのように調整を行えるかが重要だと指摘しています。
内閣府防災の官僚は…現在の内閣府防災で業務にあたっている複数の官僚に「防災省」構想について話を聞くと、扱う範囲や人員の規模など、具体的な内容がまだわからないという声が聞かれました。担当者の一人は「『防災省』となると今の規模から考えてどういう組織になるのかイメージが湧かない。どういう目的なのかはまずは、話を聞かなければならない。避難所の環境改善についても趣旨は納得できるが、予算のことなど、話を伺いながらやっていきたい」と話していました。また、別の担当者は「現状でも災害時の内閣府防災と各省庁との連携は一定程度機能していると思う。各省の防災部門を集めるのか、司令塔の機能を増員するのかなど、どういった構想なのかをしっかり確認したい」と話していました。
<内閣府防災とは>現在、政府の災害時の対応は内閣府防災担当が関係省庁間の調整役を担っています。“司令塔”とされていますが、政府の危機管理を一元的に担う組織の必要性をめぐっては、東日本大震災の発生などを受け10年ほど前にも議論が行われました。【内閣府防災担当とは災害対応を経て拡大】内閣府防災担当は、2001年の中央省庁再編に伴って発足しました。日頃は南海トラフの巨大地震や首都直下地震、富士山の大規模噴火、大規模水害などに備え被害想定など防災対策の立案を行っています。また、災害時には関係省庁との間で調整役となり被災者支援などを行ういわば“司令塔”を担っています。【定員は倍増】定員や予算は、東日本大震災や熊本地震などの災害対応を経て拡大を続けていて、定員は発足時が50人ほどでしたが現在は110人ほどと2倍余りに増えました。課長級で実務責任者にあたる「参事官」は発足時の5人から10人に倍増しました。当初予算の規模も、2001年度が45億円余りだったのに対して近年は70億円前後で推移しています。【新組織創設をめぐって過去も議論「直ちには不要」】一方、東日本大震災など大規模災害が相次ぐ中、政府の危機管理を一元的に行う新たな組織の創設をめぐっては過去にも議論がありました。2014年から2015年にかけて関係省庁の副大臣などでつくる会合で議論がされましたが各省庁の専門性が生かされなくなり、組織の肥大化を招くおそれがあるなどとして、最終報告では新たな組織について「直ちには必要性は見いだしがたい」と結論付けていました。ただ、その後も新組織を求める動きは続き、2017年には関西圏の自治体などで作る関西広域連合の懇話会が報告書をまとめ、南海トラフ巨大地震など災害対応の強化に向けて防災省や防災庁の創設が必要だと訴えていました。
政治過程論が専門の神奈川大学の大川千寿教授は、石破新内閣の閣僚に派閥の政治資金パーティーをめぐる問題の中心となった旧安倍派の議員がいないことについて、「処遇によって政治とカネの問題に対し一定の決意を見せたと言えるが、それだけをもって国民や世論が納得するかは現時点では分からない」と述べました。そのうえで、「国会で一定の議論をして判断材料を示してから解散すると言っていたことが、石破さんという政治家の面目躍如だったと思うが、党内基盤が弱い中で政権を安定させるため党内の声に耳を傾けざるをえない状況があり、一転して早期解散に踏み切ることになった。党内で支持を得られたとしても、石破さんの政治家としてのイメージを大いに傷つけることになるのではないか」と述べました。さらに、「政治とカネの問題は、政治への信頼の大前提であり、衆議院選挙でも重要な争点の1つになる。有権者は、一連の問題をどう捉え、改革に真摯に向き合っているのかをしっかり見ていく必要がある」と指摘しました。
石破内閣の発足について、能登半島地震と先月の大雨で大きな被害を受けた石川県輪島市では復旧や復興に力を入れてほしいという声が聞かれました。
仲間とともに7月にオープンさせたばかりの居酒屋が浸水被害を受けたという80代の男性は「復旧・復興は難しいと感じていますが、石破さんには被災地を見捨てないでほしい」と話していました。創業およそ80年の金物店が浸水の被害を受けたという50代の店主は「地方に目を向けて振興に力を入れてくれると被災した私たちにとっては心強いです。交通や流通、経済など地方で暮らしている私たちの元気が出るようなことに力を入れてほしい」と話していました。自宅が床上浸水したという60代の男性は「地震と水害で被災地ではみんなが疲弊しています。まだ復旧の段階で、復興まではいっていません。石破さんには現場に来てもらい、被災地のほこりやにおいなどを五感で感じてほしい」と話していました。実家の片づけ作業をしていた60代の男性は「地震だけでなく今回の水害で運営できていない介護施設があるし、従事者も不足しています。復興予算をしっかりつけてもらって、復旧や復興を進めてもらいたい」と話していました。
北朝鮮による拉致被害者の家族会代表で、横田めぐみさんの弟の拓也さんはNHKの取材に対し、「1997年に家族会が結成されてから石破総理大臣が13人目の総理となります。これだけ多くの総理に拉致被害者救出のお願いをしても、5人の被害者しか取り返せていません。すべての拉致被害者の即時一括帰国という譲れない方針を堅持していただき、被害者の親の世代が健在なうちに再会が図れることを強く望みます」とコメントしています。
北朝鮮に拉致され、その後、帰国を果たした曽我ひとみさんは「ぜひとも拉致問題を解決してほしいと思っています。時間とのたたかいであると再三再四、訴えてきました。親世代のタイムリミットの現実、拉致被害者の生活環境の悪化などを考えてみるといますぐにでも行動してほしいと切望します。拉致被害者全員を家族のもとに帰れるようにしてください」とコメントしています。
中国メディアは、石破氏が総理大臣に選出されたことを相次いで速報し、このうち国営の中国中央テレビは「自民党の石破総裁が衆参両院の本会議で行われた指名選挙で過半数の票を獲得し、第102代の総理大臣に選出された」と伝えました。また、大手ネットメディアは、新政権の閣僚に防衛大臣経験者が多いことを指摘した上で、「このような内閣の構成は石破氏が安全保障政策を重視し、日米地位協定の見直しやアジア版NATOの創設を望んでいることを示している」という見方を紹介しています。
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