10月4日午後、国会で石破茂首相の所信表明演説が行われました。
これまで、さまざまな首相就任時の所信表明演説を取材してきた政治ジャーナリストの 青山和弘氏は、4日の関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!」に出演し、石破首相の所信表明にズバリ点数をつけるとすれば「35点」だと厳しい評価をつけました。
■石破首相の所信表明演説 青山氏は「100点満点で35点」
100点満点で35点という低い点数をつけた青山氏。理由として、石破首相がこれまでの総裁選で打ち出してきたさまざまな政策について、所信表明演説でほとんど触れられなかったと言います。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「石破さんはこれまで総裁選でいろんなことを言ってきました。それで総裁に選ばれたわけです。それで総理になったんだから、当然言ってきたことが所信表明にも現れて、それですぐ選挙やるって言ってるわけですから、やはりここでちゃんと自分の考え、総理としてこうやると打ち出さなきゃいけない」
青山氏は、石破首相が総裁選で主張していた政策のうち、所信表明演説で触れられなかったものとして、「アジア版NATO」、「日米地位協定の見直し」、「夫婦別姓」などを例に挙げます。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「いろいろ石破さん言ってきたんですけれども、そういったことは完全に封印されてしまった。それならなんでこの総理にしなきゃいけなかったのか、ちょっと疑問符がつくぐらいの所信表明だと思います」
■「石破さんの良さを殺しちゃった」
石破首相の演説内容が変わった理由として、自民党内の意見に従わざるを得ない状況があると青山氏は分析します。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「結局、自民党内の大勢の意見に従わざるを得ないという判断なんです。つまり今まで自分が言ってきたことをそのままやると、自民党の中でいろんなハレーションが起こっちゃう。所信表明もあんまり言い過ぎると自民党内が荒れちゃうということなんです」
青山氏は、石破首相の姿勢が政治不信を助長する可能性があると指摘しています。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「まさに政治不信を助長するような話だと思うんです。例えば日米地位協定の見直しだって、期待していた人もいると思う。これがなくなっちゃうと、『何を信用したらいいんだ』ということになる」
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「やっぱり“党内野党的な人”だったんです。民主党にちょっと似ている。沖縄の基地問題で、『最低でも県外』と言って、普天間基地を県外に移設できなかった鳩山さんにちょっとかぶるなって声は、自民党内からも出ているところなんです」
また、今回の所信表明演説で石破首相の「良さが失われてしまった」可能性があるとも言います。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「やっぱり石破さんらしさみたいなもの。石破さんは自民党内にいても正論を吐いて、世論に近いようなことを言うのが良さだったのに、今回その良さを殺しちゃったと僕は思うんです。例えば『地位協定』にしても、地位協定の言葉を入れながら、もうちょっとうまく文章を作るとか工夫すればよかったのに。周りの秘書官たちやスタッフも、石破さんをちゃんと支えようとしてるのか。石破さん本人のリーダーシップもあるんですけれども、疑問符が浮かばざるを得ない内容だった」
■総選挙はどうなる
10月27日に投開票とされている総選挙で、国民の審判を受けることになります。自公連立で「過半数割れになる可能性がゼロではない」と言われる状況で、石破首相の「バランス感覚が分かりにくい」と青山氏は話します。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「自民党の方を向いてこのような所信表明になったと説明しましたけれども、じゃあ国民を見ないで、総選挙が近いのに大丈夫なのか。そのバランス感覚というのが、石破さんの中でどうなっているのか、非常に分かりにくいです」
岸田前首相の影響については…
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「もちろん岸田さんの影響力は大きいです。岸田さんから、『経済政策をちゃんと引き継いでくれ』と言われた。もともと石破さんは、『アベノミクスは長すぎて、金利を普通に戻して正常化すべきだ』という論者だったんです。だけど『いま金利を上げるべき時じゃない』とコロンと変わったんです。周りに言われたからというのもあるし、あと石破さんは本当に側近がいない。いままで非主流派だったので、そういう厳しさも影響してると思います」
■新内閣のウラネタ「選挙に勝つまでは我慢」
青山氏は、石破首相の周辺から「選挙に勝つまでは我慢なんだよ」という声があったと明かしています。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「要は石破色を封印した今回の所信表明も、とにかく選挙に勝つまでは自民党をちゃんとまとめて、頑張って選挙を戦う。勝てば石破色を少しずつ出していけるんだ、ということを言ってるんですよ」
しかし、青山氏はこの姿勢に疑問を呈します。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「ただはっきり言うと国民を愚弄した話。要は選挙まで黙っていようということでしょう。こういうことをしないのが石破茂だったんじゃないんですか。本当に石破さんの良さを消しちゃっているんじゃないか。実直で、誠実でということを売りにしてきたのに、結局総理になったらこれか。(これで選挙に勝てるのか?)野党がどれぐらい一本化に成功するかにもよりますが、支持率が50パーセントぐらいで始まっていますけれど、どんどん下がってくる可能性もあるんじゃないかと私は思います」
■石破首相の「裏金問題」への対応が選挙でポイントに
今後の選挙に向けて、政治と金の問題、特に裏金議員の公認問題が大きな焦点となることが予想されます。青山氏は、この問題にどう対応するかが重要だと指摘します。
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「今回の選挙、どうしても争点は裏金問題になる。野党がガンガン追求してきますから。石破さんは総裁選期間中は、自民党候補として公認するにふさわしいかどうか、議論は徹底的に行わなきゃいけない、公認しないことも視野に入れると言っていた。4日のニュースではみんな公認すると。これだと選挙に影響が間違いなくある。なので自民党内ではまだ一悶着あり、何人か非公認を出してくる可能性はあると思います」
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「やりきらないと、『あんた、なんで総理になったの?』と本当に言われかねないと思います。ここは最後、石破総理の踏ん張りどころかなと思います」
【政治ジャーナリスト 青山和弘氏】「党内のハレーションが大きかろうが、本当に覚悟と矜持が求められるところだと思います」
石破首相の所信表明演説は、今後の選挙戦や政権運営にも大きな影響を与える可能性があります。国民の目は、石破首相がこれらの課題にどう対応していくかに注がれています。
(関西テレビ「旬感LIVE とれたてっ!2024年10月4日放送)
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