手荷物検査を実施した聴衆エリアの中にも多数の私服や制服の警察官が立ち、厳重に警戒した演説会場=横浜市中区のJR桜木町駅前で2024年9月8日午後4時3分、柿崎誠撮影

 27日投開票の衆院選を控え、神奈川県警はかつてない規模で警備の準備を進めている。2022年にあった安倍晋三元首相銃撃事件の後に初めて迎える総選挙。与野党の幹部ら「大物弁士」が、候補者の応援に続々と県内入りするのが予想されている。警備に携わる県警幹部は「失敗は許されない。本音は怖い。だからこそ緻密かつ最高レベルの警戒度で臨む」と気を引き締めている。【柿崎誠】

立体的に配置計画

 9月8日、横浜市中区のJR桜木町駅前。自民党総裁選に出馬した小泉進次郎元環境相の演説に約7000人の聴衆が集まった。

小泉進次郎元環境相が演説したステージ(右上)。大勢の警察官が厳重な警戒に当たり、周囲を鉄柵で取り囲んで聴衆が近づけないようにした=横浜市中区のJR桜木町駅前で2024年9月8日午後4時29分、柿崎誠撮影

 仮設ステージの上で声を張り上げる小泉氏。周りは警備の警察官で取り囲まれ、聴衆が近づくことはできない。多数の私服の警察官も混じり、辺りを警戒。立ち止まることは許されず、演説を聴く場合は金属探知機のチェックを受け、指定されたエリアに入らなければならなかった。

 「かつてないほど多くの人が集まった。県警もかつてない厳戒態勢を敷いた」。現場を見守った県警幹部はそう明かす。

 安倍元首相の事件以降、警察庁は要人警護の運用を大幅に見直した。各県警の警備警護計画を事前に審査して指導する。県警は周囲を三次元で分析する「特殊装置」を使い、立体的な警護計画を策定して警察庁に提出。仮設ステージと聴取の間に設けた空間の大きさから駅舎の上に配置した警察官の数などについて、直前まで微調整が続いたという。

日程把握難しく

 ただ、県警を悩ませているのが大物弁士や著名人が県内入りする日程把握の難しさだ。流動的な選挙情勢で、当日に有力者の県内入りが決まったり、極秘裏に候補者の事務所などを訪れたりすることは珍しくない。県警は各党への情報収集を進めるとともに過去の演説場所を参考にどれだけ増強した警備態勢を敷けるかを検討している。

 選挙ならではの困難さもある。雑踏警備を含む警護のイロハは警護対象への「接点」を減らすこと。各党へ不特定多数の人との握手やグータッチをなるべく控えるよう申し入れているが「直接のふれあいは1票につながる」と、こだわる政治家は多い。

 県警幹部は「警備は0点か100点しかない。要人も候補者も聴衆も安全に。どれだけ臨機応変にできるかがカギだ」と力を込めた。

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