「戦後最大の人権侵害」と言われる旧優生保護法(1948〜96年)下の強制不妊手術を巡る補償法は8日の参院本会議で全会一致により可決、成立した。一連の訴訟に参加していない被害者を対象にした補償制度を創設し、手術を受けた本人が申請した場合に1500万円、配偶者には500万円を支払う。
謝罪と被害回復に関する決議も採択した。政府関係者によると、補償制度は来年1月に施行される見通し。
最高裁が7月に旧法を違憲と判断し、原告側と政府が9月に和解の合意書に調印したのに続いて、幅広い被害救済の枠組みが整った。被害者が高齢となり、偏見や差別を恐れる人も多いとされる中、全員に行き渡るかどうかが課題となる。
国の責任を明確にするため、補償法は前文で「国会および政府は、憲法に違反する立法行為と執行の責任を認め、心から深く謝罪する」と明記した。
補償金は本人や配偶者が死亡した場合、子や孫、兄弟姉妹といった遺族が受け取れる。旧法に基づく人工妊娠中絶手術を強いられた人には、一時金として200万円を支給する。
被害者側が支給を申請する必要があり、法施行から5年を請求期限とする。訴訟を経ないで迅速に対応するため、こども家庭庁に設ける審査会が被害を認定する。国と自治体は申請の手続きを周知し、相談支援体制を整備する。
補償金額を1500万円にしたことを踏まえ、訴訟に参加したものの賠償が1500万円を下回った被害者本人には、差額分を支払う。
補償法は議員立法で、超党派の議員連盟が素案をまとめた。法は公布から3カ月後に施行するとしている。
2019年の一時金支給法施行に伴い、被害者が申請、認定されれば320万円を受け取れる既存の制度は存続する。〔共同〕
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