与野党の7党首は12日、第50回衆院選(15日公示―27日投開票)に向けた日本記者クラブ主催の討論会に臨んだ。経済政策を巡っては歳出拡大や減税を求める声が多く、負担や財源に正面から向き合う議論は乏しかった。
自民、立憲民主、日本維新の会、公明、共産、国民民主、れいわ新選組の7党の党首が参加した。
日銀が1日公表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、2024年度の大企業製造業の設備投資計画は前年度比18.8%の増加となった。6月にプラスへ転じた実質賃金の伸び率は8月にマイナスとなり、持続的な経済成長が課題になる。
石破茂首相(自民党総裁)は日銀の金融政策を巡り「(政府の)口先介入は厳に慎まなければならない」と話しつつ「期待を申し上げることはある」とも唱えた。
首相は10月上旬、日銀の追加利上げに否定的な見解を示し、金融市場で円安・株高につながった。討論会では「日銀は政府の子会社でも何でもない」と語り、日銀の独立性を尊重する考えを示した。
安倍晋三元首相の経済政策、アベノミクスの負の側面も問われた。首相は「コストカット型の経済にしたところは良くなかった」と答えた。企業の内部留保は増えたものの、実質賃金は下がり非正規労働者が増えたと主張した。
「中小企業がきちんと賃上げできる体制は必ず整える」と明言し、最低賃金を1500円に引き上げる方針を明示した。原材料費の上昇分を商品やサービス価格へ転嫁できるように大企業などとの取引関係に対して監視を強めると言明した。
討論会では個人負担の軽減を求める声が目立った。立民の野田佳彦代表は消費税負担を軽減するために「給付付き税額控除」の導入を訴えた。教育無償化の拡大にも言及した。
国民民主の玉木雄一郎代表は、現役世代の社会保険料負担を引き下げると提唱した。トリガー条項の凍結解除によるガソリン代の引き下げにも触れた。金融緩和を念頭に「少し過熱するぐらいやるのが30年のデフレマインドを脱却するのにちょうどいい」と指摘した。
公明党の石井啓一代表は高齢者の医療費の窓口負担を原則3割に引き上げる維新の公約に疑問を呈した。「改革の名のもとに高齢者に対してあまりにも冷たい政策だ」と批判した。
日本維新の会の馬場伸幸代表は「べーシックインカム」などの所得保障制度を導入したうえで実行するとして、過度な負担増につながらないと説明した。
消費税の引き下げについては意見が割れた。首相は「これから先の社会保障には安定した財源が必要だ」と強調した。消費税収は景気動向の影響を受けにくいとして「消費税の引き下げは現在のところ考えていない」と断言した。
れいわの山本太郎代表や共産党の田村智子委員長は消費税の廃止や減税を主張した。
政府は電気・都市ガスやガソリン代の負担を軽くなるための支援を繰り返し延長しており、自民党内でさらに続けるよう求める声が根強い。同党は公約で低所得者向けの給付金を盛り、財源の議論が乏しいまま与野党で歳出拡大論が勢いづく。
石川県能登半島の震災や豪雨被害に対応する度重なる予備費の支出について、野田氏は「予備費ばかりで小刻みで対応するのは前例がない。効果検証できず、財政民主主義に反する」と説いた。
首相は「予見し難い予算の不足に充てる」との規定が憲法にあることなどを挙げ、予備費の支出に問題はないと反論した。能登半島を巡る災害で予備費を7回支出している状況については「検証する」と発言した。
社民党の福島瑞穂党首と参政党の神谷宗幣代表は討論会にビデオメッセージを寄せた。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。