衆院選が公示された15日、元日の能登半島地震や9月の豪雨災害で大きな被害を受けた石川3区でも前・新3人の立候補者が遊説に飛び出した。この日はいずれの候補者も石川県七尾市以南を中心に回り、被害の大きかった奥能登地区には入らなかった。有権者からは「選挙をやっている状況ではない」といった声も上がっており、各陣営は選挙戦略に頭を悩ませている。
自民前職の西田昭二氏は七尾市内の神社で第一声。地震発生直後から奥能登などの被災地を回り、被災状況の把握や被災者の声を聞いてきたと強調した。「あなただけが頼り」と被災者から声をかけられたことを引き合いに、「人生、議員生命をかけてでもふるさとのために復旧復興を頑張りたい」と訴えた。初日は同市内や中能登町を回った。
共産新人の南章治氏は羽咋市の後援組織が開いた決起集会で演説した。能登半島地震や能登豪雨の被災者は被害の悲惨さに心が折れていると訴え、複合災害は県や国に本腰を入れた対策が求められるとしたうえで、「誰もが安心して避難生活を送れる体制を作ることが大切ではないか」と力説した。その後は同市内などを回り、支持を呼びかけた。
立憲前職の近藤和也氏は七尾市内の神社で出陣式を行った。「被災者に寄り添う時に、選挙なんてやっている場合か」と石破政権の判断を強く批判した近藤氏は、タスキは着けずに防災服で選挙区内を回る考えを示し、「全国の皆さんに能登をいま一度助けてください、と主張していく選挙だ」と訴えた。初日は同市内や地元の中能登町を回った。
総選挙の実施について、懐疑的な有権者も多い。珠洲市の妻の実家が全壊したという七尾市の男性(77)は「選挙をする時間があったら、国会で補正予算を組んで復旧・復興に向けた議論をしてほしかった」と批判。一方、現在も地震による行方不明者がいる輪島市市ノ瀬町の女性(86)は「地震で地区住民が半分になった。古里に住み続けられる政策をやってくれる人を応援したい」と話した。
公示日は3陣営とも甚大な被害が出た奥能登地域には入らなかった。ある陣営は、選挙の「七つ道具」を県選管のある金沢市から運ぶのに時間がかかり、時間を無駄にしてしまうと説明。関係者は「いち早く被災地に入りたい思いもあったが、まずは地元から始めることにした」と話した。【阿部弘賢、砂押健太】
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