福島県双葉町いわき支所の部屋に開設された期日前投票所=いわき市東田町2で2024年10月16日午後1時43分、柿沼秀行撮影

 東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示解除が遅れ、避難者が多い福島県内の自治体で、国政選挙での投票率が低迷している。各選挙管理委員会は避難先に投票所を設置し、不在者投票の活用を呼びかけるが、移動や手続きに手間がかかる上、避難の長期化で地域とのつながりも薄れており、さらなる低下も懸念されている。

 第1原発が立地し解除が最も遅れた双葉、大熊両町は衆院選公示翌日の16日、多くの町民が避難する福島県いわき市の支所や出張所にそれぞれの期日前投票所を設けた。

不在者投票の活用を避難者に呼びかけるチラシ。町民の97%が町外に避難する福島県双葉町の選挙管理委員会が作り、今回の衆院選で有権者に郵送した=福島県南相馬市で、尾崎修二撮影

 双葉町は2022年8月に住めるようになったものの、帰還の動きは鈍く、町民約5300人のうち、町内在住は3%の約150人だけ。町内の投票所は1カ所で、町外には期日前8カ所、投開票日3カ所を設ける。町役場の機能が一時避難し、多くの町民が暮らす埼玉県加須市にも設置する。

 住民が避難を強いられた県内の各町村の投票率は、原発事故後の国政選挙で軒並み県全体を下回るようになった。21年の前回衆院選では、県全体の投票率が1・32ポイント増の58・01%だったが、避難者の多い双葉、大熊、富岡、浪江の4町は減り、44・24%の浪江町をはじめ県内の市町村別の投票率で下から1~4番目を占めた。

 県外避難者の大半は期日前投票より手間のかかる不在者投票を利用せざるをえない。避難者は、請求書を避難元の自治体に送る▽届いた不在者投票用紙を持参して避難先の選管で投票▽その選管が元の自治体の選管に郵送する――という流れになる。21年に郵便物の土曜配達が廃止され、開票に間に合わないケースも過去にあった。

 避難先の千葉県で夫と暮らす浪江町の女性(67)は「候補者の情報は、町から郵送される選挙公報でしか知ることができず、震災前のように演説内容を踏まえた投票はできない」と話す。町に戻り故郷の役に立ちたいが、帰還者が少なく医療環境の乏しい町の現状と、老いゆく身を考えると踏ん切りはつかない。今回も棄権はせず、早めに夫と不在者投票を済ませる予定だという。

 浪江町と同じ17年春に避難指示解除の始まった「相馬郡」の飯舘村は旧1区から沿岸部の新4区に移ったが、村民の過半数が新旧1区の福島市や伊達市に避難する。今回の立候補者3人の拠点も、いわき市や双葉郡で村とは距離がある。

 福島市と村に2地域居住する60代女性は「新旧1区の候補2人は顔をよく見るし、人柄も踏まえ投票先を考えられた。新4区の候補者は名前も顔も知らずどう判断すればいいのか」と困惑している。【尾崎修二、柿沼秀行】

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