27日投開票の衆院選は19日、公示後初めての週末を迎え、立候補者たちが繁華街などで支持を呼び掛けた。鹿児島2区では保守系2人が火花を散らし、福岡10区では野党前職と与党新人らが攻防を繰り広げている。1週間後の投開票に向け、選挙戦は激しさを増している。
保守分裂選挙の鹿児島2区
「保岡さんは私利私欲なくまっすぐで誠実。日本、自民党、次の時代に必要な人だ。若手のリーダーとして国政に送ってほしい」
19日、公示後初めて鹿児島に入った石破茂首相は鹿児島市南部の商業施設近くでマイクを握り、自民前職、保岡宏武氏(51)への支持を呼び掛けた。
鹿児島2区(鹿児島市の一部や奄美市など)は、自民会派で活動していた無所属前職、三反園訓(みたぞのさとし)氏(66)と保岡氏による保守分裂選挙となっている。
三反園氏はテレビ朝日記者を経て、鹿児島県知事を1期務めた。2020年の知事選で敗れた後、21年10月の前回衆院選で鹿児島2区に無所属で立候補し、自民前職を破って初当選。当選後は自民との距離を徐々に詰め、22年3月に二階派(当時)の特別会員に、23年2月には衆院の自民会派に入った。
その月、空席となっていた衆院鹿児島2区の党支部長に就いたのが保岡氏だった。父は法相などを務めた興治(おきはる)氏(19年に死去)。保岡氏は17年の衆院選で父の後を継いで鹿児島1区から出馬したが落選し、21年の前回選は比例単独に回って初当選した。2区の支部長に選ばれた背景には、選挙区に含まれる奄美地方がかつて興治氏の地盤だったという事情もあった。
衆院選を前に、県連内では三反園氏の公認を求める声も上がったが、党本部は保岡氏を公認候補に。三反園氏は今回も無所属での選挙戦となったが、「与党だからこそ国民の要望に応えられる」と自民への近さをアピールする。奄美地方にも度々、足を運んで要望を聞き取ってきたといい、保守層への浸透に自信をにじませる。
序盤情勢では三反園氏が先行と報じられ、保岡氏の陣営では危機感を募らせる。党本部は知名度の高い小渕優子・党組織運動本部長や野田聖子元総務相らを鹿児島入りさせ、てこ入れを図る。石破首相の来援を受けた19日、保岡氏は「私を通していただいたら15年、20年はお役に立てる。新しい2区の未来のために、皆さまのご支持を賜りたい」と声をからした。【梅山崇】
自民が議席奪還狙う福岡10区
福岡10区(北九州市小倉北区など)は、5選を目指す立憲民主党前職の城井(きい)崇氏(51)に、元県議で自民新人の吉村悠(はるか)氏(39)や元北九州市議で自民を除名となった無所属新人の大石仁人(じんと)氏(39)らが挑んでいる。
「北九州には自民党の代議士がいない。国との関係がうまくいっていない。(私は)地域に必要な予算を引っ張ってくる」。吉村氏は19日、北九州市門司区の街頭で支持を呼びかけた。
21年の前回選で、自民は北九州市内の福岡9区(八幡西区など)と10区でいずれも議席を失った。今回、9区は衆院へのくら替え出馬を目指した大家敏志参院議員が公認を得られず公示直前に立候補を断念したため「不戦敗」に。15日の公示日、小倉北区であった10区の吉村氏の出陣式には9区を地盤とする市議や県議も駆け付け、北九州市での議席奪還に総力戦で臨む。
企業・団体の全面支援を受け、組織戦での勝利を目指すが、初めての国政出馬で準備が整わず、公明党からの推薦決定は18日にずれ込んだ。陣営幹部は「これで態勢が整った。まだまだ伸びしろがあるので1週間で詰めていく」と話す。
一方、23年2月の北九州市長選で自民推薦候補と争った武内和久市長を支援して自民から除名処分を受けた大石氏は、SNS(ネット交流サービス)を駆使するなどして自民支持層や無党派層に働きかける。18日に小倉北区で開いた集会には武内市長が駆け付け、「(大石氏は)北九州だけでなく日本の未来を照らす政治家になる」と激励した。
保守系2人らの挑戦を受けて立つ城井氏は19日、小倉北区で総決起集会を開いた。「今こそ政治を変える時です。誇れる日本を子どもたちに引き継いでいきたい」と訴えると、約600人の聴衆から拍手が湧いた。
前回選では共産党が候補擁立を見送って野党共闘が実現し、9選を狙った自民候補に約3500票差で競り勝った。だが、今回は共産や日本維新の会が候補を擁立し、自民への批判票の分散は免れない。
報道機関の情勢調査で城井氏優勢が伝えられる中、陣営は緩みを警戒し、支持母体の連合福岡を中心に組織の引き締めを図る。05年の衆院選で、城井氏は郵政民営化の是非を巡る保守系2人の争いに埋没し、落選した。城井氏は19日の集会で当時の経験を引き合いにこう訴えた。「皆さまに掛けられる言葉がある。『今回は大丈夫』。でも『大丈夫』はない。どうか力を貸してください」【山下智恵、反田昌平】
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