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〈視点〉自民党員、進む変質 「地域型」から「理念型」へ 論説委員・竹内洋一
27日投開票の衆院選に向け自民党の高市早苗前経済安全保障相が引っ張りだこだ。非公認の裏金候補も含めて応援の依頼が相次ぐのは、総裁選の党員票が得票率29.6%で1位だったからだろう。 高市氏は総裁選で推薦人20人のうち13人を裏金議員に頼み、不正に甘い姿勢が際立った。首相として靖国神社に参拝すると言明し、右派イデオロギー全開。それでも、党員人気は東京、愛知、大阪をはじめ都市圏で圧倒的だった。 総裁選直前の各種世論調査をならせば、高市氏の支持率は10%強にとどまっていた。世論と党員の意識は大きく隔たる。かつて党員票は世論を反映すると言われたが、変質が進んでいるのだ。 自民党員は現在、約105万人。有権者100人に1人だ。男女比や年齢構成は公表されていないが、年配の男性が多いとされてきた。 党内事情に通暁する関係者は党員の典型を「地域のおじさん」と評する。例えば、農業や商業の団体メンバーといった地域や業界の利益に深く関わる人たちだ。 近年は議員の主張に共鳴して入党する「理念型」も増えている。党が毎年発表している国会議員の党員獲得数ベスト10に注目したい。 3年連続の首位は青山繁晴参院議員(比例代表)。地盤や支持団体を持たず、動画配信やブログを中心に活動する議員が1位の座を守ること自体が党の変化を表す。 ベスト10議員が獲得した党員数は非公表だが、青山氏は「2位と大差がある」と党から言われたそうで、年1万人程度に上るだろう。なぜ多くの党員を勧誘できるのか。 当人は「特に何もしていない。動画の最後に『自立した意思で党員になってもらうことが自民党の腐った部分をたたき直すのに役立つ』と話しているだけだ」。地縁も利害も絡まない以上、政治姿勢や主張のほかに要因はない。 青山氏は生前の安倍晋三元首相と親しく、党内の議員グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」の代表。会の基本政策は(1)父系(男系)の皇位継承(2)中国や韓国資本による日本の土地買収の拡大防止(3)スパイ防止法の制定―だ。安倍氏の継承者を自任する高市氏も会のメンバーである。 青山氏は総裁選で支持者に特定候補への投票は呼びかけず、自身は1回目に加藤勝信氏、決選投票で高市氏に投票した。支持者の動向については「高市さんに行った票は多い」とSNSやブログを介した交流から感じている。 この3年間、高市氏も党員獲得の順位を6位、3位、2位と上げた。両氏の力により理念型党員が数万人増えたと推計しても過大ではない。 安倍氏と対峙(たいじ)した石破茂氏の首相就任で「安倍時代」は名実ともに終わったように映るが、その種子は都市部を中心に根付きつつあるのか。衆院選では自民系候補の高市氏頼みの効果も注視しなければならない。