男性の自宅に2通届いた投票所入場券の封筒=男性提供(画像の一部を加工しています)

 単身世帯なのに、投票所入場券の入った封筒が2通――。東京都町田市に住む全盲の男性宅に、衆院選(27日投開票)の投票所入場券が二つ届いた。1通目には点字シールで説明があるが、その2日後に届いた2通目にはない。その謎を調べてみた。

 これは、毎日新聞の情報提供窓口「つながる毎日新聞」に男性から寄せられたものだ。男性によると、点字のない郵便物は、スマートフォンで撮影して文字化、音声化する機能を使って内容を確かめる。目が見える人に確認してもらう場合もある。

 今回、2通目の封筒についてはスマホを使い、入場券であると分かったものの、なぜ入場券が2回届いたのか分からず、不安になった。誤配かもしれないと考え、知人にビデオ通話で郵便物を見てもらっても、2通とも自分宛てで間違いない。ますます混乱した。

 町田市の選挙管理委員会に取材すると、2通とも正しい入場券だと分かった。ミスによる二重配送でもない。原因は、衆院選が「異例の短期決戦」であるからだという。今回の衆院選は内閣発足から8日後の解散、26日後の投開票で、いずれも戦後最短だ。

 町田市では、入場券の印刷や封入を業者に委託している。これまでの選挙では、点字が必要な人の分を別納してもらい、選管が点字シールを貼ってから郵送していた。

 だが今回は納期が短く、別納が困難だったという。発送先の世帯数は十数万に上るが、このうち点字対応が必要な有権者は20人ほど。これを抜き出す時間的余裕はなく、選管は発送先の全世帯に入場券入りの封筒を一斉に郵送した。本来別納で対応する有権者には、氏名や投票場所などが白紙の入場券に選管職員が必要な情報を書き入れたうえで、点字シールを貼って郵送した。

 このため、約20人には全員、2通の入場券が届いている。ただ、「2通届きますが、どちらも正しい入場券です」といった説明文は入っていない。こうした説明を点字で作成する余裕もなかったという。選管の担当者は「準備期間が短いというのは言い訳にしかならない。丁寧な対応ができず、大変申し訳なく思っています」と話す。

 男性にこうした経緯を説明すると「謎が解けて安心しました」と言いつつ、こう訴えた。「時間がない、慌ただしいというしわ寄せで、障害者が混乱する事態になりやすい立場に置かれていることを分かってもらいたいです」【山田奈緒】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。