衆院選は27日、投票を終えて開票作業に入る。自民党は公示前の247議席から減らす公算が大きく、連立を組む公明党と合わせても過半数の233議席を維持するか微妙な状況だ。石破茂首相(自民党総裁)の政権運営は厳しさを増す。立憲民主党と国民民主党は議席を伸ばす見込みだ。
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与党が過半数を割れば自民執行部の責任論が浮上するのは必至だ。新たな連携相手を探ったり、少数与党として政権運営したりする必要に迫られる。首相指名選挙をする特別国会は憲法の規定により投票日から30日以内に召集される。
衆院選は小選挙区289、比例代表176の計465議席を争った。首相は1日に就任してから初めての国政選挙に臨んだ。
首相はかねて与党の過半数確保を勝敗ラインと位置づけてきた。25日に秋田市での演説で「自公で過半数取れるか取れないかの瀬戸際にある」と危機感をあらわにした。
自民が衆院選で単独過半数を取れなかったり、自公が過半数を割ったりすれば政権交代が起きた2009年以来、15年ぶり。公示前は自公で計279議席を持ち、議席占有率は60%だった。
自民派閥の政治資金問題による逆風が続く。首相は政治資金収支報告書への不記載があった前議員らのうち12人を非公認とした。このうち9人が無所属で出馬した。
選挙終盤に一部の非公認候補の党支部に活動費として2000万円を支給したことが発覚した。公認候補の支部と同額だった。自民は党勢拡大などに使途が限られ、非公認の候補個人の選挙活動には使わないと説明した。野党は「裏公認だ」と批判を強めた。
公明は公示前の32議席を下回る可能性がある。大阪府と兵庫県の計6選挙区で、関西に強い地盤を持つ日本維新の会と初めて議席を争った。小選挙区に転じた石井啓一代表は地元での選挙活動に時間を割いた。
立民は公示前の98議席から大幅な上積みをうかがう。「政治とカネ」の問題を争点として政権批判票の取り込みを狙った。野田佳彦代表は自民や無所属の不記載候補がいる選挙区を重点的に回った。議席獲得の目標として「自公の過半数割れ」を主張した。
維新は公示前の43議席から減らす可能性が高い。大阪以外の選挙区に多くの候補を立て、全国進出を強める戦略を描いた。前回21年の衆院選で議席を4倍近くに増やし、自民と立民に次ぐ第3政党に躍進していた。
共産党は比例代表を中心に議席を得る見込みだ。公示前の10議席から伸ばす余地が出ている。
国民民主は議席の大幅増が視野に入る。「手取りを増やす」などをスローガンに若者を中心とする無党派層への訴えを強めた。政治資金問題で自民に不信感を持った保守層などの受け皿となることも狙った。
社民党は1議席の維持が見えている。れいわ新選組は公示前の3議席から伸ばす勢いだ。参政党や日本保守党は複数議席の獲得を探る。
憲法改正の発議には衆参両院で3分の2の議席が必要で、衆院では310議席にあたる。改憲に前向きな自公や維新、国民民主などの勢力で3分の2に届くかどうかもポイントになる。首相は改憲に意欲を示している。
衆院選で与党は低所得者世帯向けの給付金や電気・ガス代などの補助を打ち出し、野党も給付付き税額控除の導入や消費税減税で個人の負担軽減を唱えた。経済政策の対立軸は曖昧で、成長戦略や財政再建を巡る議論は乏しかった。
立民と共産、国民民主など野党の候補一本化は低調だった。与野党「一騎打ち」型の構図は289小選挙区のうち46で、全体の1割台半ばにとどまった。3党以上の野党候補が乱立する選挙区は100超に上った。
石破政権は8月14日の岸田文雄前首相の退陣表明と9月の自民総裁選を経て10月1日に発足した。
5度目の挑戦となった総裁選では決選投票で高市早苗前経済安全保障相を上回り、当選を果たした。世論調査などで次の総裁にふさわしい人物として長く上位にあり「選挙の顔」として期待が高かった。
首相は支持率が高まりやすい政権発足直後の衆院解散に踏み切った。解散は首相就任から8日後と戦後最短になった。党総裁選では衆参両院の予算委員会を通じて政権の考えなどを示す必要性を訴えていたものの、開催を見送った。
衆院選が公示された15日には2024年度の補正予算案を13兆2000億円を超える規模にすると明言した。与党内では低所得者世帯向けの給付金について10万円を目安とする案が浮上している。地方創生や災害対策も柱に据えて経済対策をつくる方針だ。
外交政策では持論のアジア版北大西洋条約機構(NATO)の創設や日米地位協定の改定を公約に盛り込まなかった。米国などの反発を懸念する声があり、事実上封印した。
首相は米シンクタンクへの寄稿で核兵器の日本などへの持ち込みを検討すべきだと提唱して物議を呼んだ。
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