立憲民主党が躍進した。「政治とカネ」の問題を繰り返してきた自民党に対する怒りが追い風となり、政治に変化を求める有権者の期待の受け皿となった。国民民主党も議席を大きく伸ばした。野党は多くの小選挙区で候補者一本化を実現できず、自公に代わる政権の枠組みは示せていない。自公の過半数割れを受け、新たな政権の枠組みを巡る各党の駆け引きが活発化しそうだ。(中沢穣)

◆「政治改革やってという思い結集」

立憲民主党の開票センターで記者会見する野田佳彦代表(布藤哲矢撮影)

 立民の野田佳彦代表は28日未明に記者会見を開き、「与党過半数割れが目標だったので、達成できたことは大きな成果」と語り「裏金問題について野党第1党が先頭に立ち、政治改革をやってほしいという思いを結集できた」と勝因を分析した。  野田氏は選挙戦で「政権交代こそ最大の政治改革」と有権者に政権選択を迫り、自民党派閥の裏金問題への怒りを得票に結び付けた。自民に失望した一部保守層からも票が流れた可能性がある。  野田氏は外交や安全保障政策では、自公政権との継続性を強調し、政権政党としての安定感をアピールした。党内外に「第2自民党になった」と不安視する声もあったが、立民幹部は「コアな支持層は離れていない」と自信を見せる。

◆野党間の選挙協力は進まず、自民批判票を奪い合い

立憲民主党の開票センターで記者会見に臨む野田佳彦代表(布藤哲矢撮影)

 共産党とは距離ができたが、結果として保守層を取り戻すことにつながった可能性がある。野党間の選挙協力は進まず、野党系候補と与党候補の一騎打ちに持ち込めた選挙区は52で、前回から大幅に減らし、自民批判票を奪い合う状況となった。  日本維新の会は、推薦した兵庫県前知事のパワハラ疑惑やトラブル続きの大阪万博を受け失速した。先の通常国会で自公両党と政治資金規正法改正案に衆院で賛成したことも、マイナス材料となった。前回維新に流れた改革保守系の無党派票は立民のほか、国民民主党に向かったもようだ。国民民主は「手取りを増やす」を掲げ、立民のリベラル色を敬遠した層にもアピールした。

◆自公政権入りについて「ない」と国民民主

自身の当選確実を受け、万歳する玉木雄一郎代表=10月27日夜、都内で(佐藤裕介撮影)

 自公が過半数割れしたことで、今後は野党連携の行方が注目される。国民民主の玉木雄一郎代表は27日夜の民放番組で自公政権入りについて「ない」と否定。記者会見で「政権に入れば同意していないことも同意しなければいけない」などと理由を説明した。玉木氏は、所得税が課税される最低年収額を現在の103万円から引き上げる政策の実現に取り組む考えを示したが、立民などが掲げる企業・団体献金の禁止は否定した。維新の馬場伸幸代表も連立入りは否定した。  立民の野田氏は「抜本的な政治改革を推進する一致点があるなら広く協力できる。野党で連携して法案を出せるようにしたい」と強調。「自公政権を望んでいない、(解散前に)不信任案を出した政党とは合意点を探せることは十分あり得る」とも述べ、国民や維新、共産との連携に意欲を示した。 

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