街頭で支持を訴える萩生田光一氏=10月15日、東京都内で(平野皓士朗撮影)
◆「政治家として生まれ変わる」
27日深夜、萩生田氏の事務所に当選確実の一報が伝わると、事詰め掛けた100人以上の支持者から「よっしゃー」「わぁー!」と大きな歓声が湧いた。拍手で迎えられた萩生田さんは万感の表情で何度も頭を下げ、支持者らと固く握手した。 萩生田氏は「不祥事もあり、皆さんに不快な思いをさせ、裸一貫で12日間、声をからして訴えた。八王子の代表と誇りを持って、選挙期間に約束したことを実現したい。政治家として生まれ変わって、初心に返って、やっぱり萩生田だったといっていただけるよう努力する」と語った。 過去の選挙では閣僚や党幹部として全国各地で応援演説に入っていた萩生田氏は今回、地元に張り付く「どぶ板」の選挙戦を展開した。 21日のJR西八王子駅前での街宣では「政治不信を招く事態を生じさせた」と謝罪する一方、裏金事件については「事務所で裏金づくりをしてたとか、不正利用をしてたとか、ましてや脱税などという批判は正しくない」などと釈明していた。 ◆八王子は創価学会の一大拠点
東京24区では今回、立憲民主党が有田芳生元参院議員を擁立。オウム真理教や旧統一教会を巡る問題を追及してきたジャーナリストとして著名だが、八王子市にゆかりはなく、「打倒萩生田」に的を絞った人選だ。このほか、日本維新の会の佐藤由美氏、国民民主党の浦川祐輔氏、参政党の与倉さゆり氏、無所属の畑尻文夫氏も名乗りを上げた。 八王子は創価学会にとって、創価大学をはじめ、東京富士美術館、東京牧口記念会館(創価学会創立者の牧口常三郎氏を記念)など複数の関連施設を擁する一大拠点。都議選での公明党候補の得票などから、「学会票」は一般的な小選挙区より多い4万票以上と推定されている。従来はこれが萩生田氏の当選を下支えしてきたが、今回は公明推薦はなし。萩生田氏が過去に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)のボランティアから選挙支援を受けていたことにも、厳しい視線が注がれた。◆「八王子のこと知らない人には入れない」
東京新聞は、選挙戦中盤の10月18日、21日、22日の3日間、八王子市中心部の期日前投票所で創価学会員ら公明党支持者を探し、30人に小選挙区での投票先を聞いた。 投票先として最多だったのは萩生田氏で19人。 理由を聞くと、有田氏が萩生田氏への「刺客」として送り込まれた「落下傘候補」だったことを念頭に、「八王子のことを何も知らない人には入れない」(80代男性)、「(有田氏は)地元の人じゃないから。萩生田さんは知恵をつけてがんばってほしい」(80代女性)といった回答だった。 裏金問題の影響については、「特にありません」(70代女性)と答える有権者がいた一方で、「苦渋の決断。消去法」(30代男性)との声も聞かれた。 仮に選挙区に4万票の「公明票」があるとすれば、単純計算で、公明の推薦を受けていない萩生田氏に2万5000票が歩留まりしたことになる。萩生田氏が大接戦を制することができた一因になったと言える。◆「初めて萩生田氏以外に投票した」
有田氏に投票した人は4人だった。 70代男性は「萩生田さんは裏金とか旧統一教会とか問題が多すぎる」。80代男性は「お金の問題は許せない。今回はしょうがない」と話し、萩生田氏の初当選以来、他の候補者に投票したのは「初めて」だと明かした。◆維新や国民民主の候補に入れた人も
比例は公明に投票しながら、小選挙区では「投票しなかった」と答えた有権者も4人いた。 60代女性は「裏金問題で(萩生田氏には)入れたくなかった」、40代女性は「(萩生田氏以外に)八王子らしい候補がいなかった」と説明した。 このほか、維新の佐藤氏に投票したと答えたのが2人、国民民主の浦川氏は1人だった。◆全体では萩生田氏3割、有田氏4割
今回、「比例は公明」の人を探すために、期日前投票所で100人程度に取材した。全体では選挙区の投票先は、萩生田氏が3割程度、有田氏が4割程度、残りはその他の候補者や白票・棄権だった。 取材後の10月23日には、「しんぶん赤旗」の報道で、自民党が非公認候補の選挙区支部に公認候補と同じ2000万円を支給していた問題が発覚。自民党への批判がさらに強まったが、萩生田氏は逆風をはねのけ、長く政権中枢にいた政治家の底力を見せつけた。
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