衆院選で与党が過半数割れとなった事態を受け、自民党内で石破茂首相の責任を問う声が相次いでいる。大敗のショックで今はまとまりを欠くものの、特別国会での首相指名選挙が近づけば、党内で「石破降ろし」のうねりが広がる可能性も否定できない。党務を仕切ってきた森山裕幹事長への批判も高まっており、政権運営はさらに厳しさを増しつつある。

「まずは執行部で今回の選挙結果をどう総括するのか。それからの話だ」。9月の党総裁選で首相と争った小林鷹之元経済安全保障担当相は29日、千葉市内で記者団から首相らの責任を問われると、現在の対応に不満をにじませた。

首相は投開票翌日の28日、「国政の停滞は許されない」と続投を表明し、森山氏も職にとどまった。「責任論が広がってしまう」。小泉進次郎氏の選対委員長辞任についても、首相はこう難色を示したという。

必ずしも高い目標とは言えなかった「与党過半数」を割り込む結果にもかかわらず、首相が直ちに引責を否定したことに、地方組織からは「退陣しないのは耐えられない」(桜田義孝千葉県連会長)との声が表面化。小野田紀美参院議員は「石破政権の信を問うて、この結果ということを軽視しすぎでは」とSNSに投稿した。

首相が総裁選での訴えをほごにして、超短期での衆院解散・総選挙に「変節」した背景には、森山氏の助言もあった。選挙戦最終盤で猛反発を浴びた非公認候補側への2000万円支給も、森山氏が決定したとされる。「森山氏が今回の『戦犯』なのは明らかだ」。自民中堅は憤りを隠さない。

首相への拒否感が強かった旧安倍派は「裏金議員」らが次々と落選し、弱体化は明らかだ。ただ、特別国会での首相指名選挙を控え、党内から大敗の責任論が上がるのは避けられそうにない。

29日に国会内で開かれた旧安倍派参院有志の会合では、来年夏の参院選をにらんで、首相への不満が続出した。「マグマがたまっている。このままでは終わらない」。自民ベテランは「石破降ろし」を予告する。

ある閣僚経験者は「首相指名選挙まで何も対応しないわけにはいかないだろう」と述べ、執行部は党内向けに説明の場などを設けざるを得ないとの見通しを示した。

閣議に臨む石破茂首相(中央)ら=29日午前、首相官邸

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。